脊椎脊髄センター/脳神経外科

脊椎脊髄センターについて

脊椎脊髄センター集合写真2024年SFPSS
伊藤康信先生手術写真

伊 藤 康 信 (センター長)
日本脊髄外科学会指導医、日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医

沼 澤 真 一
日本脊髄外科学会認定医、日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医、日本脳卒中学会認定脳卒中専門医

北 川 亮(副センター長)
日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医

金 澤 隆 三 郎
日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医、日本脳神経血管内治療学会認定脳血管内治療専門医・指導医、日本脳卒中学会認定脳卒中専門医、日本脳卒中の外科学会技術指導医

神 野 崇 生
日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医、日本神経内視鏡学会神経内視鏡技術認定医 日本脳卒中学会認定脳卒中専門医、日本脳神経血管内治療学会血栓回収療法認定医

山 川 功 太(非常勤医師)
日本脊髄外科学会認定医、日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医、日本脳卒中学会認定脳卒中専門医


総合東京病院は平成22年4月1日東京都中野区江古田にオープンしました。より幅広い診療体制を充実させ、患者さんのニーズにお応えすることを目的として、平成23年8月6日に脳神経外科内に脊椎脊髄センターを開設しました。

当センターでは脊椎脊髄疾患に対する外来診療を担当しています。診療日についてはこちらまたは外来担当医表をご参照ください。

手足のしびれ、痛み、脱力、腰痛、歩行困難などでお悩みの方はお気軽にご相談ください。下記は当センターで扱う主要な脊椎・脊髄疾患の一覧です。保存的治療に重点をおいていますが、無効な場合には顕微鏡下での低侵襲手術を積極的に行っています。

尚、脊髄外科外来は東京都千代田区大手町の医療法人財団健貢会 東京クリニックでも行っています。(伊藤康信、沼澤真一担当)

疾患・治療内容の目次はこちら

最近のトピックス

仙骨神経周囲嚢腫の治療について

腰部脊柱管狭窄症に対する新しい治療「脊椎制動術(SWIFT)」を開始しました

腰痛の代表的な原因である腰部脊柱管狭窄症は、軽症の場合、薬を用いた内科的治療、リハビリテーションなどを行い治療します。しかし、脊柱管狭窄症が悪化してしまった場合、このような薬、リハビリテーションでの治療では充分な効果が得られず、患者さんの方々には大きな負担となっています。

一方、腰部脊柱管狭窄症は症状が悪くなると、腰痛を生じるのみでなく、足の痺れ、痛みを生じ、歩行にも支障を来すようになります。このように症状が悪化した腰部脊柱管狭窄症に対しては、手術を行うこととなります。腰部脊柱管狭窄症に対する手術は、症状が改善して生活の質を改善するのに有効ですが、負担が大きく、一般には手術は危険なものというイメージを与えております。当院では、腰部脊柱管狭窄症に対して顕微鏡を用いた手術を行うことで、低侵襲で安全な手術を行っておりますが、術後の負担を心配される患者さんは多くいらっしゃいます。


このような腰部脊柱管狭窄症に対する手術ですが、数年前より、腰椎制動術という手術が紹介されるようになりました。腰椎制動術とは、約2cmのSWIFTと呼ばれるスペーサーを、腰椎の棘突起の間に挿入し、腰椎が過伸展するのを防ぐことで、腰部脊柱管狭窄症による腰痛を改善する方法です。従来の腰部脊柱管狭窄症に対する手術と比較し、腰椎の骨を削る操作がないことより、従来の手術以上に安全かつ短時間で行えます。また手術による傷も非常に小さいものとなり、手術時間も短いことより、場合によっては局所麻酔での手術も行えます。当院でも、この腰椎制動術(SWIFT)を開始しており、長時間の麻酔が難しい高齢者の方、従来のように腰椎の骨を切除しなくても良好に効果を得られると考えられる方に対して施行し、確実な疼痛改善を得ております。


進行した腰部脊柱管狭窄症は、腰痛のみでなく、絶え間ない足の痛み、痺れも起こし、生活の質を低下させます。当院では、薬剤での治療が困難な方に対して、この脊椎制動術(SWIFT)も含めた、最も侵襲が少ない治療で効果を上げるよう、治療法をお示ししてまいります。腰部脊柱管狭窄症と診断され、薬が効きにくいと感じましたら、ぜひ、当科を御受診下さい。

術中写真

当院での治療例(CTでのイメージ・レントゲン)

脊椎脊髄センターに最新の手術支援機器O-arm&ナビゲーションシステムを導入しました

当センターでは、脊椎脊髄外科手術の安全性をより高めるために、手術支援機器O-armおよびナビゲーションシステムを導入しました(図1)。

脊椎脊髄外科手術では、脊椎に金属製のスクリューを入れて固定することがあります。脊椎の形や大きさには個人差があり、その周囲に大事な神経や血管が走行していることから、手術でスクリューを挿入する際に、それらの組織を傷めるリスクがあります。

O-armは、手術の途中で患者さんの脊椎の画像を撮影し、その情報をコンピューターが解析して、リアルタイムでスクリューなどの金属を設置したりする場合、正しい方向、深さを教えてくれます。O-armのCT画像は,0.0数mmの誤差と高性能です。外傷によって脊椎が激しく損傷した場合や、脊椎変形、靭帯骨化症など極めて困難だった手術が安全で比較的容易に行えるようになりました(図2-4)。

脊椎インストルメント手術ではX線透視を術中に多用していますが、O-armを導入することによって患者さん、医師、手術スタッフの被曝を大幅に低減することが可能になりました。

以下はO-armおよびナビゲーションを使用した腰椎前方および後方同時固定術(OLIF&PPS)の1例です(図2-4)。

O-armおよびナビゲーションシステム

図1.O-armおよびナビゲーションシステム
左: O-arm (Type 2, Medtronic社)  右: ナビゲーションシステム (StealthStation S8, Medtronic社)

側方すべりを伴った腰部脊柱管狭窄症例

図2.側方すべりを伴った腰部脊柱管狭窄症例
左: 腰椎単純X線撮影正面像  右: 腰椎MRI(T2強調,矢状断)

術中写真

図3.術中写真
上左: O-arm撮影中
上右: ナビ下腰椎椎弓根スクリュー挿入
下: 腰椎椎弓根スクリュー挿入中のナビ像

術中および術後写真

図4.術中および術後写真
上左: ナビ下椎間スベーサー挿入中
上中,右: 椎間スペーサー挿入中のナビ像
下: 術後腰椎3DCT

骨粗鬆症性骨折体ステント留置術(VBS)を開始しました

バルーンカイフォプラスティ(BKP)に加え、骨粗鬆症性骨折体ステント留置術(VBS)と呼ばれる治療法も、2021年6月より開始しております。

VBSは、BKP手術と同様、ハイブリッド手術室で行われます。患者さんをうつぶせの状態とし、エックス線の透視下で背中側からつぶれた骨に2ヶ所の小さな穴を開けて、細い管状の手術器具を差し込みます。次に骨の中でバルーン(風船)を膨らませて、つぶれた骨の形を元に戻します。

ここまでの流れはBKPと同様ですが、バルーンを抜いた後、空いた空間にまずステントを入れてつぶれた骨をより安定した状態とした後、骨セメントをステント内部を中心として詰めていき、固まらせて脊椎を安定化させます。

VBSもBKP同様、全身麻酔下で行われます。手術ですが、創はBKPと同じく5mm程度の針穴だけですみます。したがって侵襲が少なく、脳血管、心臓、肺機能など全身の重篤な機能低下がなければ高齢者でも実施可能です。

BKP療法と比較して、ステントを使用していることにより脊椎の骨が元にもどるのを安定して行え、骨セメントの背骨の外への漏出を低く抑えることができます。それにより、重大な合併症である肺塞栓の危険はBKP同様に低く抑えられています。両手術法は、患者さんの骨折の状態に応じて、適切と判断される方が選択されます。

骨粗鬆症性骨折体ステント留置術VBS

図1 バルーン挿入し、抜くまでの手順はBKP同様。
(左)バルーンを抜いた空間にステントを入れる (中央)ステントを膨らませて骨を元に近い状態にする (右)ステント内部よりセメントを注入して骨に充満させる

VBS治療例

図2-1 77歳女性、腰痛、陳旧性Th12VCF指摘
6月12日 腰痛MRI再検 Th10,Th11,L2VCF指摘、腰痛自制内で一旦帰宅、テリボンオートインジェクター皮下注処方
6月16日 計画予定入院
6月22日 Th11,VBS 手術時間48min、EBL少量
7月2日 自宅退院

VBS治療例

図2-3 a・b:ステント拡張後  c・d:セメント注入像
e・f・g:ハイブリッド手術室でのCT画像

VBS治療例

図2-4 術後CT画像

頚椎人工椎間板置換術を開始しました

総合東京病院では2020年5月より、頚椎人工椎間板置換術 (artificial cervical disc replacement) を開始しました。

首やその周りの痛みは多くの人が抱える問題です。痛みが肩、腕、さらに手指まで広がったり、脱力やしびれを伴ったりする場合、椎間板ヘルニアや骨棘による脊髄・神経根への圧迫が原因である可能性があります。市販薬やリハビリテーションなどの保存療法で症状が改善することが多いですが、日常生活動作あるいは仕事に大きな支障をきたしている場合には外科的治療が有効である場合があります。頚椎椎間板ヘルニア・頚椎症性神経根症・頚椎症性脊髄症といった疾患に対して現在行われている前方除圧固定術は、症状は改善するものの脊椎間の動きを固定してしまうため、その運動機能を損なうことになり、隣接椎間病変の発症にも繋がります。

人工椎間板置換術 は文字通り、痛みの原因となっている椎間板を摘出して、新しい人工のものに置き換える手術です。また、骨棘を取り除いたり、椎間板腔を広げたりして、脊髄や神経根への圧迫を軽減する処置も併せ行います。人工椎間板は元の椎間板と同じように機能するように設計されているため、自然に近い首の動きを取り戻すことができます。

海外ではすでに10年以上の歴史があり、今後本邦でも広く普及することが期待されています。全ての方に手術適応があるわけではありませんが、頚椎の手術をすすめられている患者さんは是非一度ご相談ください。

頚椎人工椎間板置換術

頚椎人工椎間板置換術の一例 40歳代男性。3ヶ月来の左C6神経根症。
a: 頚椎MRI矢状断面像。C5-6椎間板レベルに椎間板の後方脱出。
b: 同部の横断面像。左脊髄および左第6神経根の圧迫。
c: 人工椎間板置換術で使用した人工椎間板 (Prestige LPTM, Medtronic社)
d: 術後の頚椎単純X線撮影側面像。

“XLIF・OLIF―背骨を削らず,間接的に神経除圧を行う低侵襲的腰椎椎間固定術”

XLIF・OLIFoblique lumbar interbody fusionの略で、XLIF(extreme lateral interbody fusion)とともに脊椎外科分野において、近年、革命的な進歩をもたらした手術方法です。

腰部脊柱管狭窄症、特発性側彎症、腰椎変性すべり症、腰椎分離すべり症、腰椎変性側彎症、腰椎変性後彎症などの各種脊柱変形などの手術治療に関して、従来は PLIFや TLIFといった、後方からまず骨(椎弓)を削って神経の圧迫を取り、その上で神経をよけてさらに奥にある椎間板にケージというスペーサーを挿入する必要がありました。XLIF・OLIFやXLIFは背骨を削る必要がなく、脇腹からの小さな創で従来よりもはるかに大きなケージを挿入することが出来るようになりました。

XLIF・OLIFは骨を削らない負担の少ない術式です。腰椎変性すべり症に対する手術の方法は多数ありますが、その多くは筋肉の多い背中側からアプローチするものです。このような後方アプローチでは、背骨から周囲の筋肉を剥離する操作が加わることから、筋肉の少ない前方アプローチに比べ、侵襲が大きくなるというデメリットがあります。
この手術では、腹部側から骨を固定するケージを挿入するため、背中側にある靭帯を除去する必要も、骨を削る必要もありません。また、腹部につくる傷は一か所3-4cmほどと小さいことも、この術式のメリットです。

XLIF・OLIFは肥厚した靭帯を除去しなくても除圧できる術式です。脊柱管狭窄の原因となる靭帯の肥厚は、椎間板の変性により椎骨が不安定な状態になったときに、生体の防御反応として起こります。そのため、固定器具により骨のぐらつきを抑えることができれば、肥厚した靭帯は徐々に薄くなっていき、神経の圧迫は自然に改善していくのです。

XLIF・OLIFの適応となる脊柱管狭窄とは、下肢の症状が軽度で、腰椎の不安定性が原因の腰痛が主症状である場合に、非常に有効です。一方、坐骨神経痛など、下肢の症状が強く現れている場合は、前述した開窓術(かいそうじゅつ)あるいは腰椎後方椎体間固定術(PLIFあるいはTLIF)など、従来から用いられてきた一般的な脊柱菅狭窄症手術が適応となります。

低侵襲的腰椎椎間固定術

診療時間・外来担当表

  • 初診の方は以下の外来をご受診ください。
    伊藤医師 月曜11~13時、第3土曜午後
    沼澤医師 月曜午後、第1月曜午前、木曜午前、第4土曜午前
  • すべて予約診療です。予約相談ダイヤル(0570-00-3387)までお問い合わせください。
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