9. 脊髄血管障害
1)脊髄硬膜動静脈瘻
図9-1 脊髄硬膜動静脈瘻の模式図
図9-2 脊髄硬膜動静脈瘻の手術前(a、b)および手術後(c、d)
脊髄内にうっ血が起こり、脊髄が広範に腫脹(a内の→←)します。b内の←は脊髄表面の拡張した静脈を示します。術後、脊髄腫脹は軽減し(c)、拡張蛇行した静脈も消失しています(d)。
図9-3 硬膜層内の動静脈瘻から硬膜を貫通し、硬膜内に流入する動脈化したdraining vein(矢印)。このveinは脊髄表面を拡張蛇行するcoronal venous vein に流出する。
図9-4 脊髄硬膜動静脈瘻の手術前(a、b)および手術後(c、d)の脊髄血管撮影所見
a:拡張・蛇行した脊髄表面の異常な静脈(←)が造影されている。
b:術後脊髄表面の異常な静脈は造影されなくなった。
脊髄を栄養する動脈は脊髄から枝分かれする神経根の近傍で硬膜を貫通するが、一部は硬膜自体も栄養する。脊髄硬膜動静脈瘻(せきずいどうじょうみゃくろう)(図9-1~9-3)とは硬膜の層内に異常な血管短絡(↓)が生じ、脊髄表面を走行する静脈に動脈が流入する病態を言い、脊髄血管奇形の一種である。このため、脊髄表面の静脈は拡張・蛇行した動脈化静脈(←)となり、正常の還流静脈血が脊髄内にうっ血を起こし、頑固な下肢のしびれ、膀胱・直腸障害、歩行障害をきたす。治療は手術による動静脈短絡部の遮断(図9-3、9-4)あるいは動静脈瘻の血管内手術による塞栓術が挙げられる。
以上、総合東京病院脊椎脊髄センターの診療内容の一部を紹介しました。手足のしびれ、痛み、脱力、腰痛、歩行困難などでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
尚、脊髄外科外来は東京都千代田区大手町の医療法人財団健貢会 東京クリニック 脊髄外科(伊藤康信、沼澤真一)でも行っています。