前立腺肥大症とは

前立腺について

前立腺は男性の生殖器官の1つで、膀胱の下部から尿道の間にかけて尿道の周囲を取り囲むように存在しています。精子を保護する体液の生成や尿が漏れないようにする、尿禁制の一部を担っているといわれています。

前立腺肥大症とは

前立腺肥大症とは、前立腺が大きくなることで尿道内腔が一部狭くなり、排尿障害が起こる症状です。超高齢化社会に突入した日本では患者さんが増加傾向にあり、厚生労働省の平成26年患者調査(疾病分類編)によると、1990年には17万2000人だった患者数が2014年には51万人に増加しています。

正常な前立腺と肥大した前立腺

左:正常な前立腺
右:前立腺が肥大し、尿道が狭くなっている

前立腺肥大症の原因

前立腺の肥大には男性ホルモンが影響していると考えられていますが、はっきりとしたことは明らかになっていません。

前立腺肥大症の主な症状

さまざまな排尿障害が起こり、次のような症状が現れます。

  • 頻尿
  • 尿意切迫感(急激におこる強い尿意)
  • 残尿感
  • 尿勢の低下

前立腺肥大症の診断

前立腺肥大症の診断には、腹部超音波検査や直腸診(肛門からの診察)などを行います。排尿障害の評価には、残尿測定や尿流動態検査などを行います。

治療方針

前立腺肥大症の治療には、行動療法、薬物療法、手術療法の3種類を組み合わせて行います。症状が軽ければ行動療法や薬物療法で対処しますが、改善が見られない場合には手術療法を考慮します。

行動療法

食事指導、過剰な水分摂取の制限、体重減少、便秘改善など、日常生活を見直すことで症状の改善を目指します。

薬物療法

前立腺や膀胱頸部(出口付近)の平滑筋を弛緩させることで大きくなった前立腺を縮小させ、尿を通りやすくします。

手術療法

薬物療法での効果が期待できない場合や、膀胱結石や腎機能障害が発生した場合には手術療法による治療を行います。手術療法のなかでも、経尿道的内視鏡治療は前立腺肥大症の標準的な治療として広く一般的に行われています。

経尿道的前立腺切除術(ThuVAP)

経尿道的前立腺切除術は、尿道から内視鏡を挿入し尿道内から前立腺を切除する内視鏡治療です。内視鏡の先にはループ状の電気メスが装着されており、カメラで映し出された患部を見ながら肥大した前立腺組織を切り取ります。

ツリウムレーザー前立腺蒸散術は、尿道内に内視鏡を挿入し、尿道内から尿道を閉塞している前立腺組織にレーザーを照射し、組織を瞬時に加熱し、蒸散させ、尿路を広げる治療法です。

組織温度が急速に100℃以上になることで組織の主成分である水が水蒸気となり、ほとんど出血することなく組織を消滅させることができます。

ツリウムレーザー前立腺蒸散術の解説イラスト

ツリウムレーザー前立腺蒸散術
前立腺組織にレーザーを照射し、ほとんど出血することなく組織を消滅させることができる

ツリウムレーザー前立腺蒸散術の特徴

ツリウムレーザーは水成分やヘモグロビンに吸収されやすく、組織への影響が深さ1mm未満(0.1~0.4mm)と浅いため、患者さんへの負担が少ないというメリットがあります。

ツリウムレーザー治療機器

前立腺肥大症の手術・経尿道的前立腺切除術(ThuVAP)で用いるツリウムレーザー治療機器


ツリウムレーザー前立腺蒸散術のメリット
  • 周囲組織への影響が少なく安全性が高い。
  • 術後の疼痛や後出血のリスクが少ない。
  • 術後の組織浮腫が少ないと考えられ、早期のバルーンカテーテル抜去が可能。

ツリウムレーザーによる手術は止血能が高いことから、抗凝固薬(血液サラサラの薬)を中止できない前立腺肥大症の患者さんに対しても実施可能です。