前立腺がんのロボット支援手術
~ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)~
前立腺がんとは
前立腺は、男性の膀胱のすぐ下にある小さな臓器で、尿道を取り囲んでいます(図1)。主な働きは、精液の一部を作ることです。

図1:前立腺と周囲の臓器の位置関係
前立腺がんは多くの場合、前立腺の外側から発生し、初期にはほとんど症状がありません。進行すると、尿が出にくい、腰や足が痛むなどの症状が現れることもあります。
診断には、血液検査(PSA)、前立腺生検、MRIやCTなどの画像検査を行い、がんの広がりや性質を評価します。その結果やご希望をふまえて、手術(ロボット支援手術など)、放射線治療、ホルモン療法、経過観察といった治療法の中から、最適な治療法を一緒に考えていきます。
ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)とは
ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)は、ロボット支援手術システム「ダヴィンチ」を用いて行う、身体にやさしい前立腺がん手術です。患者さんの身体への負担が少なく、安全で回復も早い治療法です。
お腹に1~2cm程度の小さな穴を6か所あけ、ロボットアームとカメラを挿入します(図2)。この小さな傷から手術を行うため、出血や痛みが少なく、回復も早いのが特徴です。ロボットの拡大視野と精密な操作により、神経や血管を温存しやすく、尿もれや性機能への影響も最小限に抑えられます。
通常、1~2週間の入院で退院でき、早期に普段の生活へ戻ることが可能です。当院では経験豊富な医師・看護師・リハビリテーションセラピストが、手術前から退院後までしっかりサポートします。

図2:ロボット支援手術時のポート配置図
当院でRARPを受けるメリット
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先端医療機器の導入
世界標準のロボット支援手術システム「ダヴィンチXi」を2025年4月に導入しました。 -
多職種チームによる一人ひとりへのサポート
医師・看護師・リハビリテーションセラピストが連携し、術前から退院・社会復帰までしっかり支援します。 -
患者さんごとに治療を提案
年齢やご希望、生活背景もふまえ、患者さん一人ひとりの治療法を一緒に考えます。 -
手術後のケア・フォローも充実
尿もれや性機能、日常生活に関するご不安にも、きめ細やかに対応します。
手術までの検査・準備
安全に手術を受けていただくために、血液検査、尿検査、レントゲン、心電図、心臓超音波、呼吸機能検査などを行います。がんの広がりや悪性度を調べるため、前立腺MRIや生検、全身CTや骨の検査も実施します。
必要に応じて他の臓器の検査や、専門医による追加検査を行う場合があります。普段内服しているお薬やサプリメントも、必ず医師・看護師へご相談ください(手術前後で休薬が必要になることがあります)。
入院後、手術前の準備について
手術前日は下剤を飲んだり、当日朝に浣腸を行ったりすることがあります。食事や飲み物を控えるタイミングは手術の開始時間や体調によって異なりますので、医師・看護師の指示に従ってください。
手術は全身麻酔で行い、通常3~6時間ですが、状況により長引く場合もあります。
手術後の入院の流れ
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術後1日目から
採血やレントゲンを行い、看護師と一緒に歩く練習を始めます。お腹の調子を見て、水分や流動食から食事を再開します。 -
術後5日目ごろ
尿道のカテーテルを抜きます(体調によっては遅れることもあります)。 -
術後6日目ごろ
お腹の管(ドレーン)を抜きます(これも体調によって異なります)。 -
術後7日目以降
体調が安定していれば退院となります。
主な合併症について
手術には主に以下のような合併症が起こる可能性があります。
- 出血や血尿
- 感染症や発熱
- 尿失禁(尿もれ)、排尿困難(尿がでにくい)
- 性機能への影響
- ごくまれに腸や周囲臓器の損傷、血栓、その他の予期せぬ合併症
当院で安心して手術を受けていただくために
当院では、最新の医療設備の導入と多職種からなるチーム医療の実践により、患者さん一人ひとりに合わせた治療ときめ細やかなサポートを提供しています。
治療前のご相談から、手術、退院後のフォローまで、患者さんの気持ちに寄り添いながら支援いたします。
「ここで治療を受けてよかった」と思っていただけるよう、スタッフ一同、安全で質の高い医療を心がけてまいります。
ご相談・お問い合わせ
治療内容や手術適応、不安なことがあればお気軽にご相談ください。
当院が、患者さんやその家族をサポートします。
患者さんQ&A
- ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)はどんな手術ですか?
- ロボット支援手術システム「ダヴィンチ」を使い、医師がロボットアームを操作して行う前立腺がんの手術です。小さな傷で身体への負担が少なく、回復も早いのが特徴です。
- 当院でロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)を受けるメリットは何ですか?
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- 2025年4月に世界標準の最新のロボット支援手術システム「ダヴィンチXi」を導入しました。
- 医師・看護師・リハビリテーションセラピストが連携し、術前から退院・社会復帰まで一人ひとりに合わせたサポートを行います。
- 年齢やご希望、ご自身の生活背景もふまえた治療法を一緒に考えます。
- 手術後のケアやフォローも充実しており、尿もれや性機能・日常生活の不安にも丁寧に対応します。
- 開腹手術や普通の腹腔鏡手術と何が違うのですか?
- 従来よりも小さな傷で手術でき、手ぶれのない細かい操作や拡大視野による神経・血管の温存がしやすくなっています。そのため出血が少なく、術後の痛みや回復までの期間が短くなります。
- 何日くらい入院が必要ですか?
- 個人差はありますが、通常は手術後1週間から10日程度で退院できます。術後の経過によってはもう少し入院が長くなる場合もあります。
- 手術後、尿もれはありますか?
- 手術直後は一時的に尿もれが見られることがありますが、多くの方は数週間から数か月で改善します。リハビリや生活指導もサポートしますのでご安心ください。
- 性機能への影響はありますか?
- 前立腺の周囲を通る神経に影響が及ぶため、術後しばらく勃起しにくくなることがあります。年齢やがんの位置によっては神経を残す手術も可能ですので、ご希望があれば担当医にご相談ください。
- 痛みは強いですか?
- 小さな傷で済むため、術後の痛みは比較的軽いことが多いです。必要に応じて痛み止めもご用意していますので、遠慮なくお申し出ください。
- 保険は使えますか?費用はどのくらいですか?
- ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)は健康保険が適用されます。自己負担分は加入している保険の割合や限度額適用認定証の有無などによって異なりますので、詳細は事務職員や医療相談員にご確認ください。
- 高齢でも手術を受けられますか?
- 年齢だけでなく、全身状態やご本人の希望などをふまえて、手術の適応を決定します。ご心配な点は主治医にご相談ください。
- 術後や退院後の生活で注意することはありますか?
- 退院後は無理のない範囲で日常生活が可能です。激しい運動や重いものを持つことはしばらく控えてください。具体的な注意点は医師・看護師が退院前に詳しく説明します。