外科・消化器外科
診療科について
当院外科・消化器外科は、港区にある東京慈恵会医科大学附属病院の関連施設であり、下記学会の認定・関連施設となっております。
認定・関連施設
- 日本外科学会関連施設
- 日本消化器外科学会関連施設
- 日本消化器病学会認定施設
- 日本消化器内視鏡学会指導連携施設
- 日本大腸肛門病学会関連施設
- 日本肝臓学会特別連携施設
- 乳がんセンチネルリンパ節生検加算の認定施設
- 外科集談会施設会員
当科では大学病院で専門領域の診療を経験した医師が最新の技術、知識をもって診療にあたっており、内科、放射線科、麻酔科、薬剤科、栄養管理科、看護部といった多職種と協力して、より良い医療を提供できるように心がけています。また、理学療法や嚥下、呼吸を含めた周術期のリハビリも充実しており、患者さんの合併症のない早期回復に努めています。
患者さんの病気の治療はもちろんですが、「病気を診ずして、病人を診よ」の精神を大切に、患者さんの不安や悩みなどを少しでも軽くするよう心を持って診療にあたっております。
それぞれの専門外来も開設しています。診療内容は下記ページをご覧ください。
診療内容、特色
救急医療
当院では腹部症状を訴えられた全ての患者さんの診察は、消化器外科、消化器内科であたらせていただいております。腹痛、嘔吐が主訴となる腹部救急疾患(虫垂炎、消化管穿孔、ヘルニア嵌頓、腸閉塞、腹膜炎など)は緊急手術になることがしばしばあり、迅速かつ適切な治療を心がけております。
昼夜を問わず緊急手術を行っております。「救急は断らない」をモットーに外来診療時間以外でも可能な限り対応いたしますので、遠慮なくご相談ください。
腹腔鏡手術
当科では機能温存、低侵襲手術を常に心掛け、傷が小さく体に負担の少ない腹腔鏡手術も積極的に取り入れております。
腹腔鏡手術では、炭酸ガス(CO2)でお腹を膨らませてお腹の中に手術する空間を作り、5~12mmの小さな傷から入れた腹腔鏡、鉗子を用いて手術を行います。
腹腔鏡手術は従来の開腹手術に比べ、(1)術後の痛みが少ない、(2)術後の回復が早い、(3)傷が小さい、(4)術野を拡大して細かい血管や神経を温存できる、という利点があり、近年の多くの消化器外科の手術で標準治療となっています。
当科では、全体の約80-90%の症例を腹腔鏡手術で行っております。
腹腔鏡手術の様子 モニターを見ながら繊細な手術を行います
他科連携・地域連携
- 消化器外科であるゆえに、消化器内科と協力して治療を行うことが多くあります。
早期の胃がんや大腸がん、総胆管結石などで内視鏡治療が可能な場合は消化器内科と連携して治療を行っていきます。 - 近年は高齢化が進んでおり、心臓や肺などに重度の疾患を抱えた患者さんが増加しています。当院の特徴として、心臓血管センターが併設されており、狭心症や心不全などの重度の循環器疾患を抱えている患者さんが多くいらっしゃいます。
そのような方に消化器疾患の手術を行う場合は、他科(循環器内科や麻酔科など)との連携を密にとり、安全に周術期管理を行えるよう努めています。 - 当科では、症例ごとに治療方針を検討するカンファレンスを毎週行っております。
CTやMRI画像など、1枚1枚を提示し、患者さんのために適切な治療法を目指しています。
患者さんだけではなく、ご家族も安心して治療を受けられるように、中野区だけではなく練馬区、豊島区、新宿区など近隣の開業の先生方とも連携をとっています。当科で実際に治療する前から、入院、退院後まで円滑に医療サポートが受けられるよう医療体制を整え、患者さん主体の医療を提供してまいります。
肛門外来
現在、日本人の1/3は痔を持っていると言われています。痔は脱出、痛み、出血などの症状を呈することが多く、そのような方の悩みを解決するために肛門外来を開設いたしました。
肛門外来では問診、診察(肛門鏡など)を行い、痔核(いぼ痔)、痔瘻(あな痔)、裂肛(切れ痔)、肛門周囲膿瘍など肛門疾患の診断・治療を行っています。肛門疾患は保存治療を基本としていますが、中には症状改善のために手術が必要な場合もあり、患者さんと相談しながら治療方針を決定しています。
痔核(いぼ痔)に関しては近年、従来の切除法に代わって、ALTA(ジオン)注射により術後の疼痛などは大幅に改善しており、治療効果も良好な結果を得ています。また、痔と大腸がんは症状が似ていることがあるため、痔だと思って受診せずに大腸がんの発見が遅くなることもあります。症状の気になる方は些細なことでも構いませんので、外来でご相談いただければと思います。
毎週火曜午前に外来を行っております。※原則予約制
お仕事の関係などで午後の受診が難しい方には午前中も診療しておりますので、おしりの悩み事はなんでも気軽にご相談ください。
当院は愛宕おしり研究会の関連施設です。
診療科で診る病気
良性疾患から悪性疾患まで、一般・消化器外科領域全ての疾患に対応しています。
◆悪性疾患
- 消化器がん(食道、胃、大腸、肝臓、膵臓、胆道)、GISTなど
◆良性疾患
- 肝胆膵疾患(胆のう炎、胆管炎、胆のう結石、総胆管結石など)
- ヘルニア(そけい、大腿、腹壁瘢痕など)
- 消化管良性疾患(虫垂炎、憩室炎、消化管穿孔、腸閉塞など)
- 肛門疾患(痔核、脱肛、痔ろう、裂肛など)
主な疾患の当科での治療方針
胃がん
近年、日本において胃がんは減少傾向であると言われていますが、依然として多くの患者さんが患っており、日本人にとっては身近ながんの1つです。
早期であれば治癒が可能な疾患ですので、ABC(胃がんリスク)検診などを行い、早期発見に努めることが重要です。早期胃がんに対しては、消化器内科と連携して内視鏡治療を積極的に行っており、進行がんなど内視鏡治療が困難な症例では、腹腔鏡手術や開腹手術を患者さんの状態やガイドラインに沿って行っております。
胃がんに対する術式は下記の通り様々です。当科では胃をできるだけ温存するよう考慮して治療を行っています。胃は食事を貯留・消化する大事な臓器でありますので、がんの根治性を損なわず、食事の楽しみも大切なものと考え、治療にあたらせていただいております。
(国立研究開発法人国立がん研究センター情報サービスHPより作図)
大腸がん
大腸がんは近年増加している代表的ながんの1つです。大腸がんは、長さ約2mの大腸(直腸、S状結腸、上行結腸、横行結腸、盲腸、下行結腸)に発生するがんで、日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいとわかっています。
早期であれば治癒する可能性も高いため、進行して症状が出る前に発見することが重要となります。
一方で、進行がんの場合、血便などの出血症状や、便が細くなるなどの排便の変化、腹痛などの変化が現れます。診断には大腸内視鏡検査が必要であり、大腸ポリープ(大腸がんの前段階)や比較的早期のがんを見つけた場合は、消化器内科と連携して内視鏡治療を行います。
内視鏡治療が困難な場合は、腹腔鏡手術を積極的に行っております。高度・進行大腸がんに対しても化学療法、放射線療法を含めた集学的治療も積極的に行っております。下図はS状結腸がんの手術例です。腫瘍を腸管ごと切除し、所属リンパ節の郭清を行います。
(日本大腸肛門病学会HPより作図)
肝臓がん、胆道がん、膵臓がん
肝臓、胆道、膵臓は解剖学的に非常に複雑です。また、内視鏡で診断可能な消化管(胃、大腸)のがんとは異なり、肝臓がん、胆道がん、膵がんの進展を画像だけで診断することは時に困難なことがあるため、慎重に治療方針を検討しながら診療にあたっています。
肝臓がんは、肝臓自体から発生する原発性肝がんと、他の臓器のがんが転移して発生する転移性肝がんに大きく分けられます。がんの大きさ、個数、肝臓の予備力を考慮し、肝切除、凝固療法、血管内治療などから適切な治療法を消化器内科と連携の上で選択しています。
胆道がん、膵臓がんは、開腹手術で積極的な切除を目指していますが、病期によっては腹腔鏡で行うこともあります。また、黄疸症状などが出現した場合には、消化器内科と連携して内視鏡を用いた胆道ドレナージを行い、待機的に手術を行うこともあります。病状によっては抗がん剤との組み合わせで治療法を選択し、早期の社会復帰を目指します。
胆のう結石、総胆管結石、胆のうポリープ
胆道とは肝臓でつくられる胆汁が流れていく道のことを指しますが、その胆道にできる石のことを胆石と言います。
胆のう結石(胆のうにできる結石)は存在しているだけでは悪さはしませんが、胆のうの出口に詰まって炎症(胆石発作、胆のう炎)を起こしたり、胆のう内から落下すると胆管炎や黄疸などの原因になったりすることがあります。
胆のう結石の治療は石をとるだけではなく、胆のうを摘出する必要があります。
胆のう結石の治療
(日本消化器病学会ガイドラインHPより作図)
当院では、胆のう結石症や胆のうポリープに対しては、体への負担が少ない腹腔鏡手術を第一選択としています。総胆管結石を伴っている患者さんに対しては、消化器内科と連携して内視鏡を用いて総胆管結石の除去を施行した後、当科で腹腔鏡下に胆のうをとる手術を行います。
胆のうポリープはほとんどが良性ですが、増大傾向、術前検査で血流がある場合は悪性の可能性もあります。外来で相談させていただき、原則的に腹腔鏡で手術治療を行います。
鼠径部ヘルニア
「なんだかこのところ下腹部が膨らんでいる、違和感がある、痛む」などの症状はありませんか?もしかしたらそけいヘルニアの可能性があります。
もともとヘルニアは脱出するという意味で、外科で扱うヘルニアはいわゆる脱腸です。原因は年齢、体型、生活習慣などによる構造的な問題であり、手術で修復する必要があります。
当院では従来の手術(そけい部の4~5cmほどの傷で行う)も行いますが、ご希望により腹腔鏡手術も行っています。いずれの手術もメッシュという人工物を用いて補強修復を行います。
そけいヘルニアの部位と種類
(そけいヘルニアノートHPより作図)
急性虫垂炎
右下腹部痛で発症することの多い、いわゆる「盲腸」です。治療としては、絶食による腸の安静と抗菌薬で菌をたたく保存治療と、炎症の原因である虫垂自体を切除する手術療法があります。
ごく初期の虫垂炎の場合は抗菌薬で改善することもありますが、虫垂の炎症が強く腹膜炎を起こしている場合や虫垂自体が穿孔を起こしている時には手術療法が必要となります。また、抗菌薬で一度炎症を抑えた後に、待機的に虫垂を切除する方法も患者さんのご希望を踏まえて行っております。
急性虫垂炎
(MindsガイドラインライブラリHPより作図)
従来、右下腹部の小さな切開で手術を行っていましたが、炎症の強い場合や、穴が開いて腹膜炎に発展した場合は傷が大きくなりやすく、さらに膿んでしまうことが多くありました。
近年は虫垂炎に対しても腹腔鏡手術が主流になっており、術後の創部痛や創部感染、入院期間など、開腹手術に比べて良好な結果が得られているため、当科でも積極的に行っております。
手術件数
手術件数 内訳
内訳 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
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結腸直腸癌手術 | 41 | 42 | 43 | 48 | 54 |
胃癌手術 | 17 | 11 | 28 | 15 | 17 |
肝胆膵癌手術 | 6 | 13 | 3 | 7 | 12 |
肺癌 | 12 | 24 | 20 | 14 | 27 |
乳癌 | 7 | 9 | 14 | 12 | 22 |
気胸 | 20 | 18 | 17 | 22 | 32 |
胆嚢摘出術 | 37 | 40 | 40 | 76 | 52 |
ヘルニア手術 | 57 | 49 | 58 | 60 | 62 |
虫垂炎手術 | 37 | 27 | 19 | 43 | 45 |
スタッフ紹介
羽生 信義 副院長/外科部長 動画はこちら |
主な経歴
専門としている領域
専門医・指導医
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森川 利昭 気胸センター長 |
主な経歴
専門としている領域
専門医・指導医
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貫野 宏典 消化器外科 部長 |
主な経歴
専門としている領域
専門医・指導医
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小林 康伸 医長 |
主な経歴
専門としている領域
専門医・指導医
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瀧島 輝幸 医長 |
主な経歴
専門としている領域
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松木田 沙優 医員 |
主な経歴
専門としている領域
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高野 靖大 非常勤 |
主な経歴
専門としている領域
専門医・指導医
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