乳がん乳房温存術後の5回照射
乳房温存術後の放射線治療は、再発率を減じることから重要です。
以前は週に5回、約5週間かけて計25回行う方法が一般的でしたが、現在では15回(約3週間程度)で行う治療が広まってきました。時に「ブースト」といって、4〜5回程度の局所照射を追加することもあります。
このように照射回数が少なくなったのは、前立腺がんや乳がんなどでは、理論的に回数が少ない方が副作用に比べて効果が高いという利点があるためです。そこで、さらに短くして5回程度で照射する方法も検討されました。
英国で行われた乳房温存術後(または全摘後)の照射についての大規模研究では、15回の標準治療と、5回で行う治療を比較しました。いわゆる「くじ引き試験(無作為化)」であるFAST-Forward試験の5年間の成績では、5年間の乳房内再発率はほぼ同等でした[1] 。
すなわち、26 Gy/5回(約1週間)は40 Gy/15回(約3週間)に対して再発を抑える力が劣らず、副作用の頻度もほぼ同等でした。同じ回数でもやや線量の多い27 Gy/5回(約1週間)の方法も再発率に関しては悪くないですけど、副作用が若干多かったとされています。
さらにその後2026年には治療後10年の成績も報告され、同様の結果が得られています[2]。
これらの試験の乳房内再発率の結果をまとめると以下のようになります。
| 照射方法 | 5年間 | 10年間 |
|---|---|---|
| 40 Gy/15回(約3週間) | 2.1% | 4.5% |
| 27 Gy/5回(約1週間) | 1.7% | 4.0% |
| 26 Gy/5回(約1週間) | 1.4% | 3.4% |
数字はやや異なりますが、誤差の範囲も考えると、結果はおおむね同等と考えられます。また、念のためですが、この試験に参加された患者さんたちは様々な状態ですから、各病期の患者さんの再発率は若干違います。
今後、さらに長期の結果も出るかもしれませんが、大筋で変わることはないと思われ、欧米のガイドラインでも推奨の一つに挙げられています。特に英国は積極的で、2020年代の早い段階からほぼ標準治療とみなされているようです。
1週間で完了するこの方法は、副作用も効果も変わらず、仕事や子育てで忙しい年代の女性にとって選択肢が増える朗報と言えるかと思います。
【用語】
Gy(グレイ):放射線の量を表す単位です。1回あたりの量や、合計(総量)として示します。
くじ引き試験(無作為化試験):患者さんを治療法ごとにランダムに割り当て、比較を公平にする試験です。
参考文献
[1] Murray Brunt A, Haviland JS, Wheatley DA, et al. Hypofractionated breast radiotherapy for 1 week versus 3 weeks (FAST-Forward): 5-year efficacy and late normal tissue effects results from a multicentre, non-inferiority, randomised, phase 3 trial. Lancet. 2020;395(10237):1613-1626. doi:10.1016/S0140-6736(20)30932-6
[2] Brunt AM, Cafferty FH, Kirby AM, et al. Hypofractionated breast radiotherapy for 1 week versus 3 weeks (FAST-Forward): 10-year efficacy and late normal tissue effects from a multicentre, open-label, non-inferiority, phase 3, randomised controlled trial and 5-year efficacy results from a randomised axillary substudy. Lancet Oncol. 2026;27(6):686-698. doi:10.1016/S1470-2045(26)00076-8
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監修 総合東京病院 放射線治療センター 国枝 悦夫 |
0570-00-3387