腎細胞がんの定位放射線治療
腎細胞がんの定位放射線治療の国際的な研究結果
腎細胞がんの定位放射線治療(SBRT)については、以前の記事で紹介していますが、追加します。2024年にオーストラリアの施設を中心とした国際的な研究の結果(FASTRACK II試験)が報告されていますが、70名の治療患者、年齢中央値77歳、腫瘍サイズ中央値4.6cmについて調査したところ、治療後5年の時点での局所制御は100%でした。また腎臓がんで死亡もありませんでした。
腎細胞がんの定位放射線治療の副作用
治療方法としては、4cm以下の腫瘍では1回での照射、それ以上で10cmまでの腫瘍では3回に分けて照射しています。
副作用はグレード3というやや強いものが10%(悪心・嘔吐4%, 腫瘍痛6%)と報告されていますがそれ以上のものはありません。また生命に関わるような副作用や後に残るようなものはなく、安全な治療といえます。
腎細胞がんの定位放射線治療は安全なのか?
他の治療法とは厳密な比較はされていませんが、少なくとも明らかに劣るものではありません。手術ができない場合、凍結、ラジオ波焼灼療法などを行うことが多いですが、これらは4cm程までしか適応でなく、また中心部の血管や腎盂などのある部分の腫瘍は治療困難です。その点でSBRTは優れており、他の治療ができない方にも可能な場合もある、身体に優しい治療といえます。
ただ、注意が必要なことは他の治療法では、治療後すぐに腫瘍が実質上見えなくなるのですが、SBRTでは長期にわたり腫瘍は残ります。一時的には大きくなることも報告されており数年に渡り経過観察を続けなければ評価できません。
今後の展開
腎臓がんのSBRTについて他にも質の高い報告が増えていますが、上記の報告も含めて第2相試験というレベルの、やや少人数での試験が主で、症例数をもっと増やしてより厳密に成績を見る第3相試験、他の治療法と厳密に比較するランダム化比較試験が今後必要になります。