ジェネリック医薬品と先発品の違いとは?

ジェネリック医薬品と先発医薬品の効果は本当に同じですか?
患者さんのためのQ&A

お薬を処方してもらうときに、先発品より価格が安価なことからジェネリック医薬品を選ぶことが多いと思います。今回はそんなジェネリック医薬品にスポットを当てたいと思います。ジェネリック医薬品は先発医薬品と全く同じなのでしょうか?総合東京病院の薬剤師が先発医薬品とジェネリック医薬品の違いについて詳しく解説します。

1.ジェネリックとオーソライズドジェネリック

① ジェネリックの歴史

ジェネリック医薬品(以下GE)の歴史は古く、1960年代半ばには日本最初のGEが発売されています。GEは新薬の製法特許が切れると各製薬会社が競って発売したことから、ゾロゾロと出てくる医薬品「ゾロ品」と呼ばれていました。2000年を過ぎると厚生労働省がGEの使用を推進したため、病院や保険薬局はGEへの対応を迫られることになります。そして2023年にはGEの販売数量割合が80%を超えるに至っています。
しかし、GEは粗悪品、先発品は上質品と思っていないでしょうか? これは、先発品にはないような事例が報告されたり、品質管理が悪いという報道がなされたりしたからだと思います。

② オーソライズドジェネリック

そのような背景の中、2013年6月に我が国初のオーソライズドジェネリック(AG)が発売されました。AGは有効成分のみならず、原薬、添加物、製法などが先発医薬品と同一であり、先発品メーカーの許諾(Authorize)を受けて製造販売するGEです。“粗悪品”というレッテルを貼られがちなGEでもAGは先発品と同等であると言えます。しかし、医療従事者でもAGにAG1、AG2、AG3があることはまだ余り知られていないようです。(表1)

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2.同等性からみたGEとAG

① 先発品とGEの同等性

GEは先発品の特許期間および再審査期間が終了した後に、厚生労働省の承認を受けて製造販売されます。GEでは有効成分以外の添加物について同じであることは求められていません。そこでGEが先発品と同等であるという試験のデータが必要となります。GEの製造会社は先発品で行われる臨床試験よりもはるかに簡便な試験により販売が可能となるため、GEは先発品より安価となっています。

② AGとGEの違い

一方で、AGは先発品と全く同等であるAG1、製造する工場と製造技術が異なるAG2、そして原薬と製法も異なるAG3があります。製法と技術というのが少し分かりにくいかも知れませんが、料理に例えると製法というのはレシピ(調理法)であり、技術というのはコックさんの腕前や調理器具ということになります。AG2とAG3は先発品とは違う工場で作るので、当然技術も違ってくるというわけです。また、原薬の違いは料理で言うと材料の産地や品種の違いと表現したらわかってもらえるでしょうか。でも、基本的にAGは先発品と同じであると言えます。一方で、AG以外のGEでは一部先発品と同じ部分もありますが、基本的に違う項目が多くなっています。それは悪いことばかりではなく、例えばカプセルは飲みにくいのでGEでは錠剤にしようというように工夫している場合があります。このような理由でGEでは先発品と「剤形」が違っていることがあります。

3.GEは先発品の劣化版なのか?

先発品からGEに切り替えたところ、効果がなかった、有害作用が出現したというような話を時々耳にすることがあるかも知れません。しかし本当にそうなのでしょうか。

① 医療用医薬品の品質

医療用医薬品のうち処方せん医薬品(処方せんによってのみ患者さんに交付できる医薬品)については第一種医薬品製造販売業の許可が必要です。よってこの製造方法はかなり厳しく管理されています。例えば、ビタミン薬には医薬部外品、一般用医薬品、医療用医薬品の区分があり、更に、薬とは名乗れませんが、食品扱いのものもあります。医療用医薬品は原薬の純度や成分の含有量などが細かく規定され、寸分の狂いのない製品となっています。医療用医薬品の中でも処方せん医薬品として販売されているGEは第一種医薬品製造販売業の許可を受け、さらに厳しい管理が行われています。よって、その他の区分の薬よりもかなり高品質であると言えます。

② 添加物アレルギーへの対応

2024年10月から長期収載品(GEのある先発品)の選定療養化が開始されました。これは患者さんが先発品を希望した場合、GEとの差額の1/4を特別料金として患者さんが負担する制度です。ただし、先発品を選定する理由として医学的根拠がある場合は特別料金がかかりません。GEの添加物によるアレルギーが原因で先発品を使用せざる得ない場合もあるかも知れませんが、AGは添加物が先発品と同じであるため、AGがあればそちらを優先することになります。

③ GEの製剤学的な工夫

GEにも先発品にはない製剤学的な工夫を施しているものがあり、AGよりも良い選択肢となる可能性があります。例えば東和薬品のRACTAB®技術は口腔内崩壊錠における“溶けやすさ”と“硬さ”を両立し、さらに“苦味”を抑えることが可能な製剤となっています。一部のGEについて製品管理や流通に問題が報告されているのは確かです。しかし、GEを十把一絡げに劣化版であるという評価は避けるべきだと思います。

4.薬剤師に相談しよう

このように、GEおよびAGと先発品の違いはわかっていただけたでしょうか。GEは薬価が先発品の半値程度となっていますので、患者さんのお財布だけでなく国の医療費を節減できると考えられます。その選択に当たっては是非薬剤師に相談していただければと思います。一方で、先発品の製造会社が新規医薬品の開発を十分におこなえるような国の対策も必要であると考えています。

監修

総合東京病院 薬剤科

外石 昇

薬剤科

公開日:2024年10月22日 |最終更新日: |カテゴリ:医療コラム
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