夏の暑さとペットボトル症候群、そして上手な水分補給のコツを解説!

暑い季節の上手な水分補給について教えてください。
患者さんのためのQ&A

みなさん、暑い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか。暑い夏日が続く中で、冷たい飲み物を飲むととても美味しいですね。普段、みなさんはどのようなドリンクを飲んでいるでしょうか?特に近年注目されている「ペットボトル症候群」という言葉をご存知でしょうか?正式名称は「清涼飲料水ケトーシス」、「ソフトドリンクケトーシス」と言われ、これは甘い飲み物を多量に摂取することで引き起こされる急性の糖尿病の一種です。今回は、このペットボトル症候群について詳しく解説し、夏の上手な水分補給のコツについてもお伝えします。

ペットボトル症候群とは?

ペットボトル症候群は、甘い飲み物を大量に飲むことによって起こる、急激な血糖値の上昇により引き起こされる急性の糖尿病合併症です。この症候群は特に10代から30代の若年層に多く見られ、肥満傾向にある方に特にリスクが高いとされています。

ペットボトル症候群の原因

ペットボトル症候群の主な原因は、炭酸飲料やジュース、スポーツドリンク、甘いコーヒーなどの飲み物を多量に摂取することです。これらの飲み物には、非常に多くのブドウ糖や砂糖が含まれており、体内に吸収されやすいため血糖値が急上昇し高血糖状態を来たします。この状態が続くと、高血糖の持続そのものが血糖値を下げる作用のある、インスリンの分泌を抑え、インスリンの効きやすさ自体も下がってしまいます。このため高血糖が、さらなる高血糖を引き起こす糖毒性という状態に陥ることがあります。重度の場合は意識障害や昏睡を引き起こす、糖尿病の重大な急性合併症です。

ジュースには、どのくらい糖分が入っているでしょう!?

例えば、一般的な清涼飲料水には1リットルあたり約100gの糖分が含まれています。500mlのペットボトル1本には50gの糖分が含まれており、これはスティックシュガー約16本分に相当します。このように、大量の糖分を含む飲み物を摂取することで、血糖値が急激に上昇しやすくなります。
糖質の過剰摂取が習慣となっている方や、もともと肥満気味でインスリンが効きにくい体質になっている方が高血糖の状態になると、のどが渇くためより多くの飲み物を飲もうとします。この時、糖分が大量に含まれる清涼飲料水を飲んだ場合、さらに高血糖を助長し、のどの渇きや多尿という血管内の脱水(血液が濃縮されて)により高血糖になるという悪循環に陥ってしまい非常に危険です。

ペットボトル症候群の予防方法

ペットボトル症候群を予防するためにはどのようにすればよいでしょうか。予防のためには、糖分を多く含む飲み物を避け、水やお茶などは糖分の含まれていない飲み物を選ぶことが重要です。特に、果物の味が付いた天然水などは糖分が少ないような印象がありますが、しっかり糖分が含まれているため注意が必要です。

さて、ペットボトル症候群の危険性について理解したところで、次は夏の暑さ対策と上手な水分補給の方法について詳しく見ていきましょう。

夏の暑さ対策と正しい水分補給

夏の暑さが厳しくなると、熱中症や脱水症状のリスクが高まります。これを防ぐためには、適切な水分補給が欠かせません。ここでは、上手な水分補給のコツを紹介します。

毎日約1.2リットルの水分が失われる

人間の体は約60%が水分でできています。通常、体の中で作られる水分と食事から摂取する水分が1日あたり約1.3リットルです。一方、呼吸や汗、排泄によって1日に失われる水分は約2.5リットルとされています。日常生活を送っているだけでも、1.2リットルもの水分が不足することになります。

水分補給のポイント

1. ポイント①喉が乾く前に飲む

喉が乾いたと感じたときには、すでに体は脱水状態に近づいています。ですので、時間を決めてこまめに水分を補給することが大切です。おすすめは、トイレに行った際に出てきてから一口水を飲むことです。この習慣をつけることで、自然と水分補給がしやすくなります。

2. ポイント②コーヒーやアルコールを控える

コーヒーやアルコールには利尿作用があり、体内の水分を外へ排出してしまいます。そのため、水やお茶で水分補給を行うことが推奨されます。ただし、コーヒーやアルコールも水分としてカウントされないわけではありませんので、腎臓病や循環器疾患などで水分制限のある方は注意が必要です。

3. ポイント③スポーツドリンクの選び方

熱中症対策には塩分も大切ということはよく知られていますが、スポーツドリンクの選び方には注意が必要です。スポーツドリンクには大きく分けてアイソトニック系とハイポトニック系があります。

アイソトニック系とハイポトニック系

アイソトニック系のスポーツドリンクは糖分が多く含まれており、日常的な水分補給には適していません。これに対し、ハイポトニック系の経口保水液(OS-1など)は糖分が少なく、塩分が多く含まれています。どちらも速やかに水分を吸収するために使用されるものであり、過剰に取り過ぎないように注意が必要です。通常、炎天下でダラダラと汗をかくような運動や作業でなければ、1日に必要な塩分は食事から十分に摂取できます。

日常生活での水分補給の工夫

日常生活で上手に水分補給を行うためには、いくつかの工夫が必要です。特に以下のポイントに注意してみてください。

食事からの水分補給

1日3食、規則正しく食事を摂ることが重要です。朝食を抜くと必要な栄養素や水分が不足し、体調を崩しやすくなります。特に寝ている間に汗をかいて脱水状態になっているため、朝食をしっかり摂ることが大切です。

暑さ対策の工夫

暑さを避けるために、帽子や冷却グッズ、ネッククーラーなどを利用することも効果的です。これにより、体温を下げて熱中症を予防することができます。

まとめ

本記事では、ペットボトル症候群と上手な水分補給のコツについてお伝えしました。暑い夏を健康に過ごすためには、以下の点に注意することが重要です。

  • 糖分を多く含む飲み物を避け、水やお茶を選ぶ
  • 喉が乾く前にこまめに水分補給を行う
  • コーヒーやアルコールの摂取を控える
  • 規則正しい食事を心がける
  • 暑さ対策の工夫を取り入れる

これらのポイントを実践することで、暑い夏を乗り切りましょう。皆さんが健康に過ごせるよう、適切な水分補給を心がけ素敵な夏をお過ごしください。

市販されている飲み物に含まれる糖分の量

※角砂糖1個あたり3gで換算

スポーツドリンク500ml 約10個分
フレーバーウォーター555ml 約9個分
フレーバー炭酸飲料(レモン)500ml 約17個分
りんごジュース(果汁100%)200ml 約8個分
野菜ジュース(野菜汁100%)200ml 約6個分
黒酢ドリンク125ml 約4個分
乳酸菌飲料65ml 約4個分

飲み物に含まれる糖分の量については下記より引用

子育て応援サイト CHEER!days  https://cheerdays.fcoop.or.jp/serial/vPf56

執筆

予防医学センター

齋藤 のぶ子 医師

予防医学センター

公開日:2024年6月26日 |最終更新日: |カテゴリ:医療コラム
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