慢性硬膜下血腫とは ~治る認知症って?~

治る認知症があると聞きましたが、本当ですか?
患者さんのためのQ&A

日本における65歳以上の方の4人に1人は、認知症またはその予備軍と言われています。認知症の多くは、お薬で進行を緩徐にすることはできても治すことができないのが現状ですが、慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)は、治すことができる数少ない認知症の一つです。脳神経外科 山田 理 医師が解説します。

慢性硬膜下血腫とは

慢性硬膜下血腫は、脳を包む膜(硬膜)と脳の表面との間に、徐々に血のかたまり(血腫)が溜まる病気です。頭をぶつけるなどの頭部外傷が原因となることが多く、受傷から数週間~数ヶ月経って発見されます。

慢性硬膜下血腫のイラスト

硬膜と脳の表面との間にゆっくり血腫が溜まり、脳を圧迫します

発症リスクが高い方

以下に当てはまる方は発症のリスクが高く、注意が必要です。

  • 高齢の方
  • 血液をサラサラにする薬を飲んでいる方(バイアスピリン、プラビックス、プレタール、ワーファリン、イグザレルト、エリキュース、リクシアナなど:脳梗塞や心筋梗塞、心房細動などに対して処方されます)
  • お酒をよく飲む方

慢性硬膜下血腫で見られる症状

血腫が小さい場合は無症状のことがほとんどですが、血腫が大きくなって脳を圧迫するようになってくると徐々に症状が出現してきます。発症するまで時間がかかるため、本人は頭をぶつけたことすら忘れている場合もあり、高齢の方では「歳のせい」にされてしまうことも少なくありません。

多くの場合、最初は眠りがちになる、活気がないといった症状から始まり、重症の場合は意識障害を起こすこともあります。

こんな症状は要注意
  • 眠りがちになる
  • ぼんやりとして活気がない
  • 歩行がおぼつかなくなる
  • 片側の手足が動かしづらい
  • しびれが出る
  • 頭痛がする
  • しゃべりづらい
  • もの忘れをするようになった
  • トイレに間に合わない
傾眠のイラスト

慢性硬膜下血腫の診断と治療

慢性硬膜下血腫は、頭部CTやMRI検査で診断がつきます。慢性硬膜下血腫が確認され、症状がある場合は、手術を行うのが望ましいとされています。

穿頭血腫除去術

手術適応となった場合、局所麻酔で頭蓋骨に小さい穴を開け、チューブを入れて血腫を取り除く穿頭血腫除去術(せんとうけっしゅじょきょじゅつ)を行います。手術時間は30分程度で、術後は回復する見込みが高いことが特徴です。

血腫の量が少なく症状がない場合や、高齢などの理由で手術が行えない場合には、薬物治療を行うこともあります。

穿頭血腫除去術のイラスト

頭蓋骨に小さい穴を開け、チューブを入れて血腫を取り除き、脳の圧迫を解除します

慢性硬膜下血腫は再発する?

慢性硬膜下血腫は、約1割の方で再発すると言われています。治療後も頭部CT検査などの検査を定期的に行い、経過を観察する必要があります。

慢性硬膜下血腫を予防するには

いちばんの予防法は、頭をぶつけないよう転倒に注意することです。ご自宅の家具やコードの位置を変えたりすることで、転びにくい環境を整えることが大切です。

また、頭をぶつけたときに外傷や変化がなくても数週間後~数ヶ月後に症状が現れることがあるため、頭痛や記憶力の変化などがないか、注意して生活することが大切です。

もしかして?と思ったら受診しましょう

認知症状が急に現れた場合、「慢性硬膜下血腫」が隠れている可能性があることを心に留めておいてください。「歳のせい」「認知症が始まったかな」などとそのままにせず、医療機関を受診していただくことをおすすめします。


監修

総合東京病院 脳神経外科

山田 理

脳神経外科

山田理医師
公開日:2023年2月24日 |最終更新日: |カテゴリ:医療コラム
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