口の中の病気が原因で脳梗塞に? ~歯周病対策の重要性~
患者さんのためのQ&A
歯周病が脳梗塞を引き起こすことがある?
脳梗塞は脳の血管が詰まってしまい、酸素や栄養が届かずに脳細胞が死んでしまう病気です。日本人の死因の第3位で、年間に約11万人が死亡(※1)しています。(※1 2017年人口動態統計より)日本はこれから急激な高齢化を迎えるため、脳梗塞に罹患、脳梗塞により死亡する人はますます増加すると予想されています。
最近の研究で、口の中の病気によって脳梗塞が生じることがわかってきました。脳神経外科医で脳血管内治療専門医である渡邉貞義先生と口腔外科専門医の小村健先生に、歯周病と脳梗塞の関係について話を伺いました。
口の中に生じる病気:歯周病
歯磨きがしっかりできていないと歯の周りに歯垢が付着し、歯と歯肉との間のすき間(歯肉溝)に細菌が繁殖して、歯肉に炎症が生じます。その結果、歯肉は赤く腫れ出血を起こしたりします。これを歯肉炎と呼びます。
この状態が続くと炎症は歯周組織(歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨)に及んで、歯周炎になってしまいます。歯周炎が進行すると歯周ポケット(病的な歯肉溝)が深くなり、歯を支えている歯槽骨が吸収されて歯がぐらぐらするようになり、ついには抜歯をしなくてはならない状態に陥ってしまいます。
この歯肉炎と歯周炎を総称して、歯周病と呼びます。日本では30歳から50歳代では8割の人が、60歳代では9割の人が歯周病に罹患しているといわれています。
歯周病と脳梗塞との関係
歯周病原因菌の刺激により動脈硬化を誘導する物質が出て、血管内にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)ができ、血管の内腔は狭くなります。また、プラークが剥がれて血液の塊ができると、その場で血管が詰まったり細い血管が詰まったりします。
脳の血管がプラークで詰まったり、頸動脈や心臓から血の塊やプラークが飛んできて脳血管が詰まったりすると、脳梗塞が生じます。歯周病の人はそうでない人の2.8倍、脳梗塞になりやすいといわれています。
歯周病になりやすい人の特徴は?
歯周病は、歯垢や歯石が溜まって歯肉炎、歯周炎になるだけではありません。生活習慣や病気によって歯周病になってしまうケースもあります。
タバコや口呼吸、自分にあっていない歯ブラシの使用などによって歯肉が脆くなり、歯周病に至ることがあります。また、ストレスや偏った食事、糖尿病や肝臓病などの病気によって抵抗力が低下しているところに歯周組織を傷つけてしまい、歯周病になることもあります。
- 歯周病になりやすい人の特徴
- 喫煙、過労、偏った食生活、ビタミンC不足、口呼吸、不適切な歯ブラシの使用、糖尿病、肝臓病、高血圧によって起こる全身病
歯周病セルフチェックリスト
歯周病のセルフチェックをしてみましょう。1~2個当てはまる場合は、歯周病の可能性があります。3個以上は歯周病が進行している可能性がありますので、早めに歯科を受診しましょう。
- 歯磨きをすると出血する
- 歯肉が赤くブヨブヨしている
- 歯と歯の間に食べ物がつまりやすい
- 歯がぐらぐらする
- 口が臭いと言われる
- 最近歯肉がやせてきた
- 歯が長くなってきた感じがする
- 歯肉を押すと膿のようなものが出てくる
- 歯を磨かないことがよくある
歯周病は病院で検査できます
病院では、歯肉溝/歯周ポケットの深さ、歯槽骨の吸収程度、歯の動揺度、歯周組織の炎症程度などを検査して、歯周病の有無や進行度を診断します。
日頃の口腔ケアで脳梗塞を予防しましょう
毎食後、歯磨きを行うようにしましょう。舌の掃除も重要です。歯磨きや舌の掃除を心がけることで、歯周病原因菌の数を減らすことができます。甘いものは歯垢を作りやすいため、食べ過ぎに注意しましょう。また、タバコは歯周組織の血液循環を悪くして歯周病を進行することにもつながるため、注意しましょう。
血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの人は、脳梗塞などの動脈疾患の発症を予防するためにも、歯周病の予防や治療がより重要です。
まとめ
歯周病が原因となって脳梗塞が生じることがあります。歯周病の予防と治療が脳梗塞の予防にもつながります。日頃の口腔ケアを心がけましょう。