病は気から?がんは心(臓)から?
患者さんのためのQ&A
「病は気から」という言葉があります。これを誇張して、気が張っていれば病気にならない、などというのは非科学的でとんでもないですが、精神状態も身体の病気に影響するとされています。
もちろんがんはほっておけない病気ではあるのですが、現在ではむしろ治る病気ともいえます。一般的な病気でもがんよりむしろ治りにくい病気がたくさんありますが、がんというだけでもうダメだ、と考えるより、希望を持って冷静に病気に対処するのとでは結果が違うかもしれませんね。
心不全ががんを悪化させるという研究結果
ところで、心臓病は多くの人々が罹患している病気ですが、その一つに心不全があります。心不全は一つの病気というよりも心臓の機能が低下しているという幅の広い状態です。
がんとの闘病が心不全などの心疾患に関連することがあっても、その逆、すなわち心不全ががんに関係することはあるでしょうか?
心不全ががんを悪化させることはこれまで専門家の間でもほとんど知られていませんでしたが、最近の研究では、どうも心不全があるとがんが増長するらしいということがわかっています。まだ人間において明らかに証明されたわけではありませんが、動物実験においては、心不全のマウスではそうでないマウスよりも人工的に植え付けた腫瘍の増殖が速いことがわかっています。
全身状態がよくないとがんが再発しやすい?
これまでも、全身の状態があまり良くない、なんとなく元気がない人は、(専門用語で、パフォーマンスステータス、略してPSが低い、などといいます)がんの治療に対する反応が悪く、再発や転移しやすいことが様々な臨床研究でわかっていました。
しかし、全身状態がよくないとなぜがんが再発しやすいのか、理由が不明でした。全身状態が悪いと免疫機能も低下しておりがんが再発しやすいのだとか、また一部のがんでわかっていることとしては貧血(赤血球の数が少ない状態)では放射線治療が効きにくいとかいくつかの要因があるのかと思いますが、その一つに循環器系の状態が悪いことなども影響しているのかもしれません。
基礎疾患のあるがん患者さんにも有効な「定位放射線治療」
がんに加えて心臓病などの基礎疾患のある方や高齢者は、手術や化学療法など他の治療が難しい方もいらっしゃいます。
「定位放射線治療」では、放射線を集中する局所の反応は強力ですが全身の副作用は大変少なく、手術や化学療法ができない方の症状緩和に役に立つこともあります。
まだまだ一般には知名度の低い治療ですが、より有効につかわれると良いですね。
監修 総合東京病院 放射線治療センター長 国枝 悦夫(東海大学客員教授) |