医薬分業と薬剤師の役割
~意外と知らない⁉くすりの話 第2回~
患者さんのためのQ&A
皆さんは「時は金なり」ということわざを知っていますか。「時間はお金と同じくらい貴重なものである」という意味です。皆さんの貴重なお時間を少しだけ、このコラムを読むために活用していただければ嬉しいです。
病院で薬がもらえないのはなぜ?
今回はなぜ病院で薬がもらえないかというお話をします。
1990年代までは病院に行って、医師の診察を受けたら会計をして、その場で薬を受け取ることができました。私も子どもの頃、風邪をひいた時に「このシロップを飲んでね」と病院の受付で薬をもらったことを覚えています。
それが今は病院で診察を受けるまで長い時間待ち、やっと診察が終わったと思ったらまた薬局に行って待ち、家に着くころにはへとへとに…なんてことも。「病院で薬をもらって、そのまま家に帰りたい」そう考えるのは自然なことだと思います。
医薬分業という仕組み
現在、医師が出した処方箋を保険薬局に持っていき、そこで薬剤師が調剤しています。これを「医薬分業」といいます。
医薬分業の良いところは、薬の専門家である薬剤師が皆さんの使用しているすべて薬の確認を行っていることです。薬によっては飲み合わせが悪いと効果が弱くなってしまったり、強くなりすぎて副作用が起きたりしてしまうことがあります。他にも薬だけでなく、使用しているサプリメントや健康食品との飲み合わせも注意しなければなりません。
そういったものを薬剤師は確認し、皆さんが安全に治療できるようにしています。
医薬分業における薬剤師の役割
薬剤師は他に薬についての詳しい情報を患者さんにお伝えしています。薬を飲むタイミング、吸入剤の使い方、軟膏や点眼剤の最も効果の高い使用方法など、薬剤師ならではの専門的な情報です。医師との診察時間の中ではなかなか薬について詳しく聞けなくても、薬剤師でしたらもっと気軽に聞けるのではないでしょうか。その分、医師は診察や治療に専念できます。
医薬分業が進む前、医療機関でそのまま薬をもらっていた時、実は今以上に薬をお渡しするまでに時間がかかっていました。その医療機関で受診した患者すべてが、一か所の院内薬局に集中するためです。また、その病院に入院している患者さんの薬も準備しているため、更に時間がかかってしまいます。
かかりつけ薬局を決めて便利に
しかし現在、保険薬局は様々な場所にあります。駅の構内やスーパーの中、ドラッグストアでも調剤が可能なところがあり、今ではコンビニエンスストアよりも多いそうです。
皆さんが自由に保険薬局を選べるところも良い点のひとつです。忙しくて保険薬局で待つ時間がない方は、スーパー等の保険薬局を利用すると、買い物している間に薬の準備をしてくれます。自分の生活の一部となるようなかかりつけ薬局を決めておくと、自分の時間がちょっぴり自由になる気がしませんか。
保険薬局を有意義に活用しましょう
保険薬局が外来受診している皆さんの薬を、院内薬局は入院している患者さんの薬を役割分担することで、更にしっかりと安全に治療ができるようになります。
保険薬局を利用することで、専門家による薬の安全性を確保できるなら、保険薬局を利用する時間も有意義なものになるのではないでしょうか。
監修 総合東京病院 薬剤科 正村 早紀 |