ストップ風疹!免疫をつけよう
患者さんのためのQ&A
風疹とはどんな病気?
風疹とは、風疹ウイルスによって引き起こされる全身感染症です。感染経路は飛沫感染で、新型コロナウイルス感染症の感染経路として考えられているエアロゾル感染よりは感染率が低そうに思われるかもしれません。(注:2020年9月現在、新型コロナウイルス感染症の感染経路の断定はできていません)
しかし、同じく飛沫感染症であるインフルエンザは免疫がなければ1人の患者から1~3人にうつす感染力であるのに対し、風疹は1人の患者から5~7人にうつす強い感染力を持っています。つまり風疹の感染力はインフルエンザより強いといえます。不顕性感染といって発症はしているけど症状がない人もいれば、重篤な合併症を併発する人もいます。
風疹の主な症状は発熱、発疹、リンパ節の腫れなどですが、成人で発症すると関節痛が強く出たり、小児ではまれに脳炎、血小板減少性紫斑病などの合併症が起こることがあります。発疹の出る前後1週間ほどは周囲に感染するおそれがあります。
どうして風疹にかかったらいけないの?
「小さいころ風疹にかかったけど特に大丈夫だった」「他の感染症でも一緒でしょ?」とお考えの方も多いかと思います。では、なぜ風疹に罹患しないよう予防する必要があるのでしょう?
その理由は、妊娠中の女性が風疹に感染すると、おなかの中の赤ちゃんに大きな影響を及ぼす可能性が高いからです。具体的には、おなかの赤ちゃんが目や耳、心臓に障害の出る先天性風疹症候群で生まれてくるおそれがあります。その確率は妊娠初期(妊娠20週頃まで)に感染するほど高く、妊娠1ヶ月では50%以上の高い確率で先天性風疹症候群を発症するという報告があります。
先天性風疹症候群てどんな病気なの?
先天性風疹症候群の主な症状な下記の通りです。
- 先天性の眼の病気(白内障、網膜症、緑内障など)
- 先天性の耳の病気(難聴)
- 先天性の心臓の病気(動脈管開存症など)
- 低出生体重児
- 血小板減少性紫斑病
平成24年から平成25年にかけての全国的な風疹の大流行で45人の赤ちゃんが先天性風疹症候群と診断されました。このうち11例は、生後1歳3ヶ月までに亡くなったそうです。
風疹に一度かかったから大丈夫?
風疹に一度風疹にかかった人は、多くの場合は生涯風疹にかかることはないといわれています。しかし、ここで問題なのはそれが本当に風疹だったか?ということです。
子供のころ風疹にかかった記憶があるという方のほとんどは血液検査などで診断されたのではなく、症状だけで医師から診断された場合や、もしくは病院へ行かずに保護者が判断した場合もあるでしょう。実は、風疹にかかったことがあると答えた人の血液検査をしたところ、約半数が実際には風疹ではなかったという調査結果があります。実際は「はしか」や「りんご病」だった可能性もあります。
風疹にかかったからもう大丈夫と考える前に抗体検査などを活用してみてください。
風疹ワクチンと東京オリンピック
来年に延期されることになった東京オリンピック・パラリンピックですが、いまだ新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、開催に不安を感じている方も多いかと思います。世界中から多くの方が日本にやってくる、確かにその状況はどんな感染拡大をもたらすかと考えると恐ろしくもありますよね。ただ、怖いのは新型コロナウイルス感染症だけだと思っていませんか?それは大きな間違いです。
日本では見ることの少ない風疹や麻疹ですが、国外ではまだ流行している地域もあります。私たちにその感染症に対する免疫(抗体)がなければすぐに日本でも感染は広がってしまうでしょう。新型コロナウイルス感染症にはまだ安全なワクチンがありません。でも、風疹・麻疹には安全で強力なワクチンがあります。実は日本でも昭和37年から平成2年生まれの方は風疹ワクチンの接種漏れに注意が必要です。風疹ワクチンについて、次回のコラムで詳しくご説明します。
監修 総合東京病院 小児科 尾関 恵里奈 |