ワクチンの役割
患者さんのためのQ&A
ワクチン、その重要性とは
ワクチンとは、ウイルスや細菌が出す毒素の病原性や毒性を弱めたりなくしたりしたものです。これを接種することで、病気の感染を防ぐ、発病を防ぐ、重症化を防ぐ、感染症の蔓延を防ぐことができます。さらに、感染症の排除・根絶にもつながります。
ワクチンを接種することを予防接種といい、ワクチンで予防できる病気のことをVPD(Vaccine Preventable Diseases)といいます。
実は、VPDは現在20種類以上あります。このVPDの中には、新型コロナウイルス感染症より感染率が高い、死に至る、後遺症が残るような病気も多く含まれています。しかし、ワクチンを接種することでそのような状況を防ぐことができます。逆にいえば、ワクチンを接種しているから新型コロナウイルス感染症ほどの騒動にはならないのです。では、これらVPD感染症のワクチンを受けずに必要な免疫を獲得することがなければ、どのような状況になると思いますか?
皆さんは「ワクチンは怖いから」「お金がかかるから」「効果がないから」「病院に行くとコロナにうつるから」と、ワクチンをなんとなく避けていませんか?
ワクチンを接種することは、マスク・手洗い・三密回避などなど・・よりなにより、感染症を防ぐ最善の対策なのです。
多くは小児期に接種するワクチンですが、十分な免疫が獲得できていない、または一度獲得した免疫が減衰している成人の方も実は多くいらっしゃいます。また、季節性インフルエンザワクチンは毎年接種が推奨されています。
風疹・結核は過去の病気?
「麻疹も風疹も周りにはあまりいないし、結核も百日咳も昔の病気でしょ?」
そう思われる方も多いかと思います。確かにワクチンがなかった1950年頃、麻疹による死亡者数は5千人以上、百日咳による死亡者数は8千人以上でした。しかし、ワクチンが開発され長い間・広く接種されるようになり、感染者数を抑えることができました。つまり現在の状況があるのは、予防接種事業が適切に行われてきた結果です。
ただ残念なことに、これらの感染症は現在でも確実に残っており、決して過去の感染症ではありません。その理由は、ワクチンの効果で感染症が見られなくなると副反応ばかりがクローズアップされてワクチンを接種しなくなる人が増え、免疫を持っていない人が増加し、感染症の蔓延を引き起こしているからです。
麻疹・風疹・結核・百日咳も、現在でも深刻な感染症です。このうち、不織布・布マスク・手洗いや三密回避では感染を防ぐことができない感染症もあります。麻疹・結核は空気感染といって新型コロナウイルス感染症より感染率が高いと考えられています。
ワクチンで防ぐことができる感染症は、予防接種を受けた人自身が感染症を防ぐことができる個人防御と、多くの人が予防接種を受けたことによって社会全体から感染症が減る社会防御の双方から予防することが最善の策なのです。
監修 総合東京病院 小児科 尾関 恵里奈 |