前立腺がんの放射線治療は5回だけ外来通院でよい?

前立腺がんに対する放射線治療は大きく進歩しており、欧米では多くの前立腺がんが組織内照射や外照射という放射線療法で治療されています。手術と同様の治療成績で、とくにIMRTという方法ではこれまで放射線治療の欠点であった直腸障害などの副作用が激減し、外来で可能なことから日本でも放射線治療を選択される方が増えています。しかしこれまでの治療では、35回から40回ちかくも通院しなければいけないことが欠点でした。


近年、前立腺がんに対しては数回(5回程度)の治療で正確に照射する定位放射線治療が有効であることがわかってきました。毎日(土日休日を除く)照射する方法と、週に何回かでおこなう方法がありますが、後者のほうが治療中の副作用が少ないようです。


この治療が始められた当初は、再発の危険の少ない低リスク前立腺がんを主な対象としていましたが、今回ご紹介する北欧の論文では中・高リスクについて初めて第3相という大規模な試験の結果を報告しています。中リスクから高リスクの前立腺がん患者千人規模のくじ引き試験の結果によると、39回と7回の二つの分割法で再発に差がありませんでした。副作用に関しても定位放射線治療にて治療終了直後で一時的に副作用が強かった程度であり、長期の副作用に関しては差がありません。この結果からすれば中、高リスクの前立腺癌でも定位放射線治療は有望な選択肢として良いように思います。


ただ、まだ更に長期の10年以上経過をみた結果が少ないこと、基盤となるIMRT技術自体が日本では普及が遅れており経験が少ないこともあり、すべてのリスクグループで標準的におこなうには注意も必要です。



監修

総合東京病院 放射線治療センター

国枝 悦夫

放射線治療センター  放射線治療セカンドオピニオン外来

国枝悦夫医師
公開日:2020年9月1日 |最終更新日: |カテゴリ:前立腺, 放射線治療コラム