脳卒中のTMS治療(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)
脳卒中のTMS治療
当科では「1秒間に1回」という低頻度刺激を「健側大脳(病巣がない側の大脳)に適用します。低頻度TMSは、刺激を与えた部位の神経活動を抑えると報告されています。よって、右の図に示すように健側大脳に低頻度TMSを適用すると、健側大脳から病側大脳にかかる(半球間)抑制が低下して、結果的に、機能代償を担うとされる病巣周囲組織が抑制から開放されることでその活性を増すものと期待されます。
これに対して高頻度TMSは、刺激を与えた部位の神経活動を高めると報告されているため、病側大脳に高頻度TMSを適用する方法もあります。
換言すると「左右大脳の働きのアンバランスが、TMSによって改善される」ことになります。
NEUROとは
NEURO(NovEl Intervention Using Repetitive TMS and Intensive Occupational Therapy)とは、東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科の安保雅博医師グループが世界に先駆けて考案した、脳卒中後上肢麻痺(手指の麻痺)に対する革新的治療アプローチをさします。
以前には、TMSを適用することで確かに脳卒中後の上肢麻痺は改善するものの、その程度は軽微で効果の持続も短いとされていました。
これに対してNEUROは、ただTMSを適用するのみでなくそれに並行して集中的なリハビリテーション治療を行うことで、上肢運動機能の回復をより確固たるもの(回復が顕著で効果が持続する)にしようとの考えから開発されたアプローチ法です。その結果、東京慈恵会医科大学附属病院で2008年より開始し、多くの脳卒中後患者さんで上肢機能の回復がみられるにいたっています。
(東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座のホームページはこちら)
健側大脳に低頻度TMSを適用、病側大脳にかかる抑制を減少することで、病側大脳の神経活動を活性化する(リハビリテーション治療に対する反応性を上げる)。 |
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麻痺側上肢に対するリハビリテーション治療を集中的に行い大脳のもつ機能代償能力(障害された機能を補う能力)を最大限に発揮させる。 |
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大脳内の機能代償が促進されて、障害されていた上肢運動機能が改善を示す。 |
現時点におけるTMS治療-NEURO15-の成績は?
2008年4月に東京慈恵会医科大学附属病院にて始まったNEUROは、これまでに全国12病院で約2,000人以上が治療を受けられており、7~8割の患者さんで上肢機能に何らかの症状改善がみられています(改善の程度には個人差あり)。
当院では2010年6月からNEUROを開始しており、2015年3月現在ですでに650人以上の患者さんが治療を受けられております。副作用は発生しておらず、NEUROによって症状が増悪したり新たな合併症が生じた患者さんもおりません。
入院スケジュール<脳卒中>
金曜 | 土曜〜金曜 (日曜は休み) |
金曜〜火曜 (日曜は休み) |
水曜〜木曜 | 金曜 | |
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午前 | 入院 | rTMS | 自主トレーニング | 自主トレーニング | 退院 |
個別訓練 | rTMS | rTMS | |||
自主トレーニング | 個別訓練 | 治療後評価 | |||
昼休み | |||||
午後 |
・治療前評価 ・試し打ち |
rTMS | 自主トレーニング | 自主トレーニング | |
個別訓練 | rTMS | rTMS | |||
自主トレーニング | 個別訓練 | 治療後評価 |
- 金曜日に入院し、当日上下肢の運動機能の評価を行います。
- 翌日土曜日~「TMS+個別訓練(60分間)→自主トレ(60分間)」という治療の組み合わせを午前に1回、午後に1回行います。
※日曜日はお休みになりますが、祝日は平日と同様にリハビリを実施します。 - 治療最終日およびその前日に効果判定の評価を行います。
当院でTMS治療-NEURO15-を受けるには?
当院におけるTMS治療-NEURO15-の適応の有無は、東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科の基準に沿って、当院の医師が判定しております。医師が「治療適応有り」と最終判断を下した患者さんに限ってのみ、当院でTMS治療-NEURO15-を受けることができます。
当院でのTMS治療-NEURO15-施行を希望される方は、担当医師の外来を受診してください。
「治療適応有り」と判断された患者さんについては、当院から詳細をご連絡いたします。
当院の担当医師外来について
- 毎週金曜日に外来を行っています(休診日の場合もあります)。
- 完全予約制のため、下記よりお問い合わせください。
- 受診の際には必ず紹介状をお持ち下さい。
良くある質問と回答
- 治療を受けるまでの流れはどのようになっていますか?
-
- 適応基準に合うかどうか確認する。
- 当院の担当医師の外来を受診する。
※当院の担当医師の外来は完全予約制です。こちらからお問い合わせください。 - かかりつけの医療機関に相談し、紹介状を準備する。
- 担当医師外来にて診察を受け、治療の許可をいただく。
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ご入院日の予約と入院前に必要な検査を受ける外来日の予約をする。
※入院前の外来日は入院の2か月~2週間前までに行う。当日は担当医師の診察と諸検査を行う。
- 治療費はいくらかかりますか?
- TMS治療にかかる費用は入院中のお部屋代(自己負担)、お食事代、リハビリテーション料、入院費用となります。入院治療費には保険が適応となります。お部屋代や保険の負担額等により費用は変わりますのでお問い合わせください。
※高額のため「高額療養費制度」を利用されることをお勧めします。
TMS・ボツリヌス療法受付窓口
(医療連携支援センター 入退院調整室内)
070-1243-1337
(月~土 9~17時)