単孔式胸腔鏡手術

単孔式胸腔鏡手術とは

胸腔鏡手術は1990年頃より開始され、当初、小さな切開を数個おいて手術されていました。小さな切開とは大まかには以下のような目的で、多くは2-3か所の切開で行われてきました。

  1. 胸腔鏡を入れるための切開
  2. 術者の左右の手の操作のための切開
  3. 助手のための切開

これらをまとめて一か所だけの小さな切開で行う手術が、単孔式胸腔鏡手術です。

単孔式胸腔鏡手術の普及

単孔式胸腔鏡手術は10年ほど前から開始され、次第に広がってきました。

森川医師は早くからこの手術に注目し、安全で安心な単孔式胸腔鏡手術を広めるため、2018年4月に新百合ヶ丘総合病院の小田誠呼吸器センター長ら有志と共に、全国規模の研究会を設立しました。

私たちの活動もあり、単孔式胸腔鏡手術は年々発展し、重要な手術の一つになっています。

単孔式胸腔鏡手術を進める理由

手術はだれにとってもイヤなものですが、中でもイヤがられるのが手術の傷と、手術後の痛みです。

痛みの少ない手術を小さな切開一つで行う単孔式胸腔鏡手術は究極の手術です。この単孔式胸腔鏡手術には、従来の多孔式胸腔鏡手術よりもさらに高度な技術が必要です。私たちは全国の仲間たちと協力し合いながら、単孔式胸腔鏡手術の開発を進めています。

単孔式胸腔鏡手術に限らず、手術で最も大事なことは、安全です。安全が担保されて初めて、患者さんにとって安心な手術になります。私たちは手術の安全を特に重視していて、少しでも安全な手術方法や、少しでも安全な操作ができる器具の開発を進めています。海外の先進的な施設とも積極的に交流してきました。

初めは一つの傷だけでできるいちばんシンプルな手術からスタートしました。このような患者さんには従来の大掛かりな手術をわざわざ行う必要がないからです。そしてゆっくりと範囲を拡げていきました。

手術の途中で少しでも危険があれば、従来の慣れた胸腔鏡手術や開胸手術に変更します。おかげでこれまで患者さんには良い結果を残してきました。これからもこの方針を守っていきます。

単孔式胸腔鏡手術の特徴

単孔式胸腔鏡手術の特徴は、何と言っても患者さんの体の負担が一番小さいことです。

当院での単孔式胸腔鏡手術は極めて安全に行われていて、高リスクの患者さんや90歳を越える高齢の患者さんでも、さらに小さい傷、さらに小さい痛みの手術でお元気に退院されています。

単孔式胸腔鏡手術を行う、総合東京病院気胸センター

森川医師は2018年5月に着任し、気胸センターを立ちあげました。

気胸センターについて

人口の長寿化にともない、高齢の患者さんも増えてきました。高齢の方々が現役であった時代は、喫煙率が高く多くのヘビースモーカーがいました。現在の高齢者にはその影響で肺気腫など肺の病気の方が多くおられます。

肺気腫はタバコにより肺が膨らんでしまう病気です。膨らみつづけた結果、肺を包む膜が伸びきってしまいます。その結果肺がパンクすることが珍しくありません。

肺気腫でもともと呼吸が苦しいのにその肺がパンクしてしまうと、肺の空気が胸の中に漏れて、気胸という状態になります。こうなるといよいよ呼吸ができなくなり、救急車を呼ぶしかなくなります。

気胸の原因となる病気は、肺気腫のほか、間質性肺炎、びまん性肺疾患、肺腫瘍など様々です。このようにもともと病気のある肺に起こった気胸を「二次気胸」または「難治性気胸」といいます。

気胸センターの目的は、このような患者さんに安心・安全・有効な医療を提供することです。


気胸をよくするために、まず胸にチューブを入れて、胸に溜まった空気を抜きます。空気を抜くだけで落ち着いてしまう方もおられます。

しかし多くの肺の傷みが強いかたは、パンクした部位を自力で治すことは難しく、治療が長引いてしまいます。そんな時古いタイヤではありませんが、その部位を外から塞ぐ肺のパンク修理、つまり手術が必要になります。

従来このような患者さんの手術はリスクが高く、多くの施設で手術は無理とされてきました。そのような方でも、総合東京病院気胸センターでは単孔式胸腔鏡手術と手術法の改良により安全な治療を行っています。