手の外科(手外科外来)

ご挨拶

手はとても複雑で精緻な器官であり、手の治療には形成外科と整形外科の知識と技術が要求されます。私は形成外科医として整容に対する感覚を身につけ、マイクロサージャリーなど精緻な手術のトレーニングを受けるとともに、整形外科の基本を学んで手外科医専門医となりました。

皆様の手に関するお悩みを私の手で癒し、喜んでいただけることを何より嬉しく思っております。

手外科外来   福本 恵三

手外科とは

手は、日常の生活、働いて生活の糧を得るため、絵画や彫刻、楽器演奏など芸術活動、スポーツなどにその力強い、繊細な機能が用いられています。また、手は顔にならんで感情の表現にも用いられ、人の目に触れやすい部分であるため自然な美しさも求められます。

このように人間の行動に密接に関わっている手(上肢)の疾患を治療する診療科が手外科です。手外科では扱う疾患は肘から手指までの骨折、脱臼、切創、挫滅創などの外傷、腱鞘炎、テニス肘などの腱の障害、へバーデン結節や母指CM関節症などの変形性関節症、手根管症候群などの末梢神経障害、先天性の障害や関節リウマチによる手指変形などとなります。

手外科を専門とする医師の集まりである日本手外科学会には約3,500名の会員が所属しています。日本手外科学会の認定する手外科専門医は手外科診断・治療に関するエキスパートです。整形外科/形成外科の専門医取得後に5年以上手の外科に関する研修を受け、手の外科専門医試験に合格しています。

手外科で多く見られる疾患についてのご紹介

腱鞘炎

腱鞘炎は、手指や手関節の痛みの原因となるお病気で最も多いものです。

手指や手関節には腱鞘という腱が通るトンネルがあります。屈伸により繰り返す機械的刺激で腱や腱鞘が腫れ、通りが悪くなることで痛みや引っ掛かりを生じます。手指に生じるものでカクカクと引っかかるものを「バネ指」と呼び、母指に最も多く見られます(図1)。

手指の腱鞘

手関節の親指を動かす腱が通る腱鞘部に生じるものはドウケルバン病と呼びます。いずれも女性に多く、手の酷使が関係しています。多発するものは糖尿病、リウマチ、透析をしている方などに多く見られます。

腱鞘炎の治療は手を使いすぎないようにすること、少量のステロイドを腱鞘内に注射することで、腫れをひかせるようにします。それでも治らない場合や、繰り返す場合は腱鞘切開術という手術を行います。

腱鞘切開術は外来で行う局所麻酔の手術で、シワに沿った小さな切開をし、腱鞘を切開して腱の通りを良くするもので、15分程度で終わります(図2)。2日程度は包帯を巻いておき、その後はテープを貼るだけで手を洗えます。1週間で抜糸します。

腱鞘切開術の皮膚切開

手根管症候群

手根管症候群は、手指の痺れの原因となるお病気で最も多いものです。

手のひらには手根管という、神経(正中神経)と指を曲げる腱が通るトンネルがあります(図3)。ここで神経が圧迫されることによって、母指から環指の半分にかけてしびれや痛みを生じます。朝方や手をよく使った後に症状が強くなることが多いものです。

進行すると母指の付け根の筋肉がやせて、物がつまみにくくなってしまいます(図4)。妊娠中や更年期の女性に多いですが、骨折などの外傷、長く透析を受けている方にもよく見られます。

正中神経の分布 運動障害

手根管症候群の診断はしびれの範囲、誘発テスト(図5)、正中神経伝導速度検査などで行います。

手根管症候群の治療は手の使い過ぎを避けていただき、腱の腫れを減らして神経の圧迫を取るためのステロイド手根管内注射などを行います。効果がない場合や、再発を繰り返す場合は手根管開放術を行います。

手根管開放術は外来で行う局所麻酔の手術で、手のひらに小さな切開をし、手根管を作っている靭帯を切離して正中神経の圧迫を取るもので、30分程度で終わります(図6)。術後は包帯を巻いておき、1週間後の外来受診時に抜糸します。

誘発テスト 手根管開放術

変形性関節症

変形性関節症は、関節の軟骨がすり減ることからだんだん骨も変形し、関節が太くなったり痛みが生じるお病気です。

身体中の関節に起こりますが、中でも手は最も多い部位です。中高年の方、閉経期以降では女性に多く、手をよく使う方にも多く見られます。手の中では指先に近いDIP関節が最も多く、次に母指の付け根の母指CM関節、指の2番目のPIP関節の順になります。

変形性関節症の診断はX線検査で関節の変形があるかを確認することで行います。リウマチなどとの鑑別のため血液検査を行うことがあります。変形性関節症になると痛みや動きが悪くなることから生活の質・お仕事や趣味の活動性が低下することがあります。また、手は外観も重要です。特に女性では手指の変形は精神的な苦痛にもつながっています。

変形性関節症はお年のせいなどと言われ、放置されていることがよくあります。軟骨の変性を薬で治すことは出来ませんが、内服薬、関節注射、装具などで痛みを和らげることが出来ます。それでも痛みが強かったり、変形や関節の動きが悪くなれば、手術的に治療いたします(図7)。手術で変形を治すことで見た目も良くすることが出来ます(図8)。

手の変形性関節症 ヘバーデン結節

対象となる症状

肘から手指までの痛みやしびれ、関節の腫れや変形、外傷による運動障害や変形、生まれつきの手の変形など

行っている検査

X線・CT・MRI、超音波などの画像診断、神経伝導速度検査、知覚検査など

行っている主な治療

  • 腱鞘炎に対するステロイド注射・腱鞘切開術
  • 手根管解放術
  • 変形性関節症に対する保存的治療・関節形成術・関節固定術・人工関節置換術
  • 骨折の保存的治療・手術的治療
  • 腱・神経縫合術
  • 瘢痕拘縮形成術
  • 先天異常手に対する手術的治療

スタッフ紹介

福本恵三

福本 恵三

形成外科・手外科外来

主な経歴

  • 1986年 東京慈恵会医科大学 卒業

専門としている領域

  • 上肢の先天異常
  • 手指の皮膚軟部組織再建
  • 手根管症候群
  • 腱鞘炎
  • ヘバーデン結節・母指CM関節症など変形性関節症

専門医・指導医

  • 日本形成外科学会認定形成外科専門医・小児形成外科分野指導医
  • 日本手外科学会認定手外科専門医

外来診療

水曜日 午前、午後