治療の対象となる主な疾患
放射線治療の対象疾患
放射線治療は様々ながん、腫瘍などに対して行われています。
乳がん
乳房温存手術後に放射線治療を行うと局所再発が3分の1になると言われています。通常25回で照射していますが、最近では15回程度で行っても同様の効果が得られるということがわかっています。さらに追加して4~5回の電子線照射を行うことがあります。乳房全摘手術後もリンパ節転移があった場合には放射線治療を行った方が良いことがわかっています。
副作用は少なく、皮膚が赤くなったり日焼けのように多少黒くなったりしますが、早期に回復します。
前立腺がん
限局性前立腺がんは放射線治療の良い適応です。手術と放射線治療は同様の成績で、どちらを行うかはご本人の選択次第といえますが、手術ができない方にも放射線治療は適しています。ただし現在のところ、37回ほど通っていただくことが必要です。最近では5回ほどで行う方法もあります。
まだ歴史は浅いですが、前立腺がんの放射線治療は欧米では一般的です。当院でも実施いたします。
肺がん
リンパ節転移のない4センチまでの肺がん(非症細胞肺がん)に対しては体幹部定位放射線治療をおこないます。手術とどちらが良いかはまだわかっておりませんが、体の負担が少ないことが特徴です。
リンパ節転移のある肺がんには、手術ができない場合に抗がん剤と併用した放射線治療(化学放射線治療)を行います。最近は、Ⅲ期非小細胞肺がんに対して免疫チェックポイント阻害剤と併用する化学放射線治療で、成績が著明に向上しています。
頭頸部がん
頭頸部がんに対しては化学放射線治療を行います。発声や嚥下の機能などを温存できることが利点です。腫瘍やリンパ節領域に一致させるような放射線治療(IMRT)で、唾液腺機能低下などの副作用が軽減できます。
食道がん
食道がんは手術が行われることも多いですが、放射線治療もほぼ同等の成績が得られます。化学療法が困難な方には放射線単独で使用することもありますが、できる限り化学放射線治療を行います。食道を温存し、QOL(生活の質)が改善することが利点です。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は放射線感受性が高く、比較的少ない線量でも効果があります。化学療法も大変効果がありますが、残った場合などに使用します。
婦人科腫瘍(子宮がん等)
子宮頸がん治療は日本では手術も多いですが、欧米ではむしろ放射線治療が主体です。治療成績は同等で副作用は少ないといえます。腔内照射という特殊な治療の併用が原則で、他施設と連携して行います。
脳腫瘍
脳腫瘍は大変種類が多いですが、その中で頻度の高い神経膠腫に対しては30回ほどで治療します。高齢者の場合には10回で治療することもあります。
また、再発などに対して頭部定位放射線治療を行うことがあります。
肝がん
肝細胞がんは放射線感受性の比較的高い腫瘍です。高精度放射線治療の技術で照射します。日本ではまだあまり普及していませんが、非常に効果の高い治療と考えています。
膵臓がん、腎がん
膵臓がんは緩和的治療として放射線を行うことが多くありましたが、小さな腫瘍には定位放射線治療を行うことで効果があります。呼吸移動によって腫瘍が動くため、呼吸同期照射などを行います。
腎臓がんはこれまで放射線感受性が低いと考えられていました。古い教科書では「腎臓がんは放射線治療の適用外」と記載のあるケースも見かけます。しかし、1回に大線量を投与する定位放射線治療ではかなり効果があることがわかってきました。そのため、手術のできない腎細胞がん等には定位放射線治療が行われます。腎機能はほぼ温存可能です。ミリ単位で照射するため、最新の技術である呼吸対策が必要です。
転移性腫瘍(脳・骨等)、その他悪性腫瘍
10個程度までの脳転移の場合は、定位放射線治療(X-ray Knife)の効果が高いです。ガンマナイフでも治療できますが、当院の場合は患者さんの負担が少ないことが特徴です。
体幹部の転移でも、原発巣が制御され、かつ3~4個程度までの転移の場合には、定位放射線治療で生存期間に対する効果があります。2020年4月より、5個までの転移に対して保険適用が始まりました。
骨転移の疼痛には1回の治療でも十分効果があります。外来でも治療が可能です。狭い範囲の椎体転移や、再照射などでも定位放射線治療が有効です。2020年4月より保険適用が始まりました。
ケロイドなど良性病変
放射線治療の対象は悪性病変がほとんどですが、ケロイド手術後に数回、少量の照射を行うことで成績が向上します。副作用はまずありません。