アルツハイマー病の新規治療薬レカネマブについて

認知症治療新薬「レカネマブ(レケンビⓇ)」を用いた治療について

2023年12月に新しいアルツハイマー病治療薬であるレケンビ®(レカネマブ)の製造販売が承認され発売されました。当院においても、安全かつ適正に薬を使用できるように体制を整え、運用を開始しました。

治療の流れ

レカネマブ治療を希望される患者さんの外来予約から治療に至るまでの流れを説明します。

①もの忘れ外来受診し診察

②認知機能やMRI検査から適用基準に合致していることを確認

③脳内のアミロイドβ蓄積を確認

④検査結果を説明し、文書による同意確認

⑤2週間に1度の点滴治療を開始


①もの忘れ外来受診し診察

最初にもの忘れ外来を予約していただきます(紹介状を持参していただくことをお勧めします)。
レカネマブは軽度認知障害(MCI)または軽度認知症レベルの早期アルツハイマー病患者さんにのみ適応となっています。初診時の診察やその後の検査(通常、神経心理学的検査、脳MRI、脳血流シンチグラフィー等を1日あるいは数日に分けて実施)の結果、対象外と判定されることがあります。その場合は通常の診療を提供させていただくか、紹介先の医療機関で診療を継続していただきます。レカネマブによる治療の対象と判断された場合、検査結果の説明の後、「アミロイドβの蓄積を調べる検査」を予約し、実施します。


下記は治療の対象外となります

  • もの忘れの原因がアルツハイマー病ではない
  • 原因がアルツハイマー病であっても認知症の程度が中等度以上
    30点満点のMMSE検査で22点以上で、臨床的認知症尺度であるCDRが0.5または1(認知症の疑いまたは軽度)であることが条件となり、この基準に該当しない場合は治療の対象外となります。)
  • 脳MRIにおいて治療による副作用のリスクが高い特有の所見を認めた場合
    (脳の中にむくみや出血を生じた跡がある場合には治療できないことがあります。)

②アミロイドβの蓄積を調べる検査
TrueBeamSTx

アミロイドPET

レカネマブの投与対象は臨床診断に加えて、検査結果においても厳格に規定されています。特に重要なのが脳へのアミロイドβの蓄積が認められることです。アミロイドβの蓄積を証明する検査としては、アミロイドPETという核医学検査と、脳脊髄液検査がありますが、当院では侵襲の低いアミロイドPET検査を優先してお勧めしています。


PET検査依頼(医療機関向け)


③検査結果の説明

初診時の診察とその後の全ての精密検査の結果を総合的に判断し、レカネマブの投与の対象に該当するか否かを説明させていただきます。効果や安全性などについて理解され、文書による治療の同意がなされた場合には治療が開始されますが、レカネマブの治療適応がないと判定された場合には、どのような予防策・治療法を講じることができるかを説明させていただきます。


④投与

治療適用があると判定され、投与を希望された方には、点滴注射を行います。使い始めの初期には、副作用として頭痛、寒気、発熱、吐き気などが一過性に出現する場合があるため、当院では治療開始後1回目と2回目は1泊2日の入院治療をお勧めしております。

投与は2週間に一度のペースで、18か月間(1年半)行います。なお、投与開始後は脳の腫れや出血などの副作用が生じる可能性があるため、その後も定期的な脳MRI検査が必要です。


⑤費用負担

レカネマブの投与による費用の概算は表の通りです。

体重 1回あたりの使用薬剤 1ヶ月(2回分)の患者負担額
※1
高額療養費上限額
※2
50kg 500mg×1瓶 1割:22,888円 1割:18,000円
2割:45,777円 2割:18,000円
3割:68,665円 3割:適用無し
60kg 200mg×3瓶 1割:27,466円 1割:18,000円
2割:54,932円 2割:18,000円
3割:82,988円 3割:80,176円

※1:金額は薬剤のみ(診察や検査等を除く)の費用です。
※2:レケンビ®(レカネマブ)の投与量(体重)、年齢や所得によって費用は大きく変わります。『高額医療制度』を用いることで費用を大幅に下げることができる場合があります。費用についてご不明な場合は、当院の入退院窓口のスタッフが説明させていただきます。