2017年11月29日(水)、当院STR東京ホールにおいて「心不全高齢化を考える」をテーマにカンファレンスが開催されました。地域の先生方をお招きし、当院医師による講演も交えながら意見交換を行いました。
はじめに、中野雅嗣医師(循環器内科部長)が座長を務め、羽田佑医師(循環器内科)が「高齢者心不全に対する水利尿薬治療」と題し、講演を行いました。
心不全初日から利尿薬トルバプタンを使用し、良好な経過をたどった高齢者急性心不全の3症例を紹介。また、急性心不全治療ガイドラインでの利尿薬の推奨について提示し、トルバプタンの有用性について発表しました。
「急性心不全における利尿薬として、トルバプタンはナトリウム利尿薬との併用により腎機能悪化を来さず、早期に体液貯留改善を見込め、早期心不全からの回復によりADLを低下させずに早期退院を達成できる」と結論づけました。
中野雅嗣 医師
続いて、まるたに内科循環器科院長の丸谷公一医師を座長に迎え、滝村英幸医師(循環器内科医長)が登壇、「心不全増悪予防のための利尿薬アップグレード治療~ループ利尿薬の臓器障害を回避する~」と題した講演を行いました。
心不全患者数の将来推計を示しながら、高齢者の心不全患者は益々増える見込みで、慢性心不全患者は80歳以上が30%近くを占めること、高齢者心不全の特徴として、高血圧、心房細動、弁膜症の合併が多く、ナトリウム保持能の低下、拡張不全の増加や年齢とともに予後不良の傾向にあることなどを紹介しました。
心不全治療における利尿薬(トルバプタン)については、患者の入院期間、年度別に見た心不全患者の推移、体液貯留改善期間の比較を行いながらその有用性を示しました。
また、症例を提示しながら、腎臓の保護に役立ち、再入院の抑制、利尿薬抵抗性を作らないことなど利点を説明し、慢性心不全の進展ステージにおける心不全の症状なしでリスクが高い状態の「ステージA」、器質的心疾患があり心不全の症状・徴候のない「ステージB」の段階から治療の必要性があると述べました。
閉会に伴い、村松俊哉医師(心血管インターベンション治療センター長)が挨拶を行い、高齢者心不全は年々増えてきている。アメリカでは心不全が治療のメインストリームとなっている。日本もやがてそうなっていくだろうと述べ、今後も一緒に勉強していきましょうと参加者に呼びかけました。
講演2:座長 丸谷公一 医師
滝村英幸 医師
村松俊哉 心血管インターベンション治療センター長