公開日:2017年3月28日 |最終更新日:
|カテゴリ:松岡医師コラム
ドライバーの睡眠時無呼吸症候群
先日早朝、中野駅の近くでタクシーが歩道に乗り上げた事故があった。運転手は重症であったが、幸いにも乗客はいなく歩行者にも被害は無かった。この事故は居眠り運転により発生したが、睡眠時無呼吸症候群(以下「SAS」という)の影響が大きいと疑われた。
私は時々、早朝に中野駅前より総合東京病院へタクシーで通勤している。その際、タクシーの運転手にSASのことについて話をしている。その内容は「睡眠時間が6時間未満の場合、居眠り運転を起こす危険性や実際に追突事故や自損事故の危険性が高まる」ということである。
特に概日(がいじつ)リズムに逆らっている交代勤務者は、業務に適した時間に睡眠をとるため、よく眠れなくなる。なお、概日リズムとは『サーカデアンリズム』とも呼ばれ、身体に備わった体内時計(24時間サイクル)のリズムのことをいう。
したがって、タクシー運転手さんは24時間シフト交代勤務型であるため睡眠障害が最も多い職種の1つと言われている。
企業健診におけるSASの重要性
私はタクシー、バス、電車等の運転手さんは企業健診にて、SASの検査項目は必須と考える。現在SASの簡易検査(ふるいわけ)は自宅にて一晩ですることができる。しかも、保険診療が適用され、3割負担の場合は約3550円と安価に検査することができる。
検査の結果、AHI指数(無呼吸や低呼吸が1時間に何回あるかを表す指数)が40以上の場合は、精密検査を受けるまでも無く要治療とみなされる。
人の命を預かる運転手さんや睡眠時間の少ない企業戦士、いびきをかいている生活習慣病の患者さんはSASを疑い、突然死の心筋梗塞や脳梗塞を予防するため、まずは簡易検査を行いましょう。