がん治療における免疫療法
がんの治療における免疫療法は急速に進歩しています。増殖するがん細胞はヒトの免疫機構の攻撃から逃れるための隠れ蓑のような機構を獲得します。その隠れ蓑を剥がし免疫の攻撃に晒すようにするのが、京都大学の本庶博士がノーベル賞を受賞した免疫チェックポイント阻害剤です。さらに放射線治療後に免疫療法をおこなうと、放射線によってがん細胞が壊れてがんの抗原性が発現し、効果が高まる可能性があります。
肺がんに対する放射線治療と免疫療法
肺がん(ここでは一般的な非小細胞がん)でも放射線と免疫療法は活躍しています。手術不能の3期肺がんにおいて、化学療法と放射線治療の後に免疫チェックポイント阻害剤(デュルバルマブ)を追加するPacific試験では、生存期間が画期的に延び、病気の進行を抑えられることが分かり、標準治療になっています。
また、早期の肺がんでも線量を集中する定位放射線治療を行うことがあり、手術と同等の効果があるとも言われています。2023年に最も権威ある医学雑誌の一つ、ランセットの研究では、初期の肺がんや再発した一部の肺がんに対して、定位放射線治療をニボルマブ(商品名オプジーボ)による免疫療法と併用することの効果が調べられました。その結果として両者の併用が患者の治療成績をさらに改善することが示されました(図)。ただ、この研究は第2相試験というもので標準的な治療となるためにはより大規模な第3相試験が必要です。また、同時に併用するよりは放射線直後に免疫療法を施行することが良いようです。
今後のがん治療
このように免疫療法の追加は、がん細胞を直接攻撃するだけでなく、体の免疫力を活性化し、がんの進行を抑える手助けをします。更にさまざまな分野で放射線と免疫療法の相乗効果が判明して、効果が高くかつ身体への負担の少ない治療が発展することが期待されます。