花粉症の季節がやってきた~鼻づまりを放っておかない~
鼻づまり対策について教えてください。
患者さんのためのQ&A
スギ花粉が飛ぶ季節になりました。もう既に花粉症でお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は耳鼻咽喉科・大塚医師が自身の花粉症になった経験を交えながら、鼻づまりが起こる原因やその弊害、対処法など「鼻づまり」にスポットを当ててお話をします。
花粉症になってしまった耳鼻科医
私が耳鼻咽喉科医師になったばかりの頃、日本人の約2割がスギ花粉症だといわれていました。増加の一途といわれつつも自身は花粉症ではなかったため、他人事のように感じており、それほど興味も持たずに研修をスタートしました。ところが、その年度終わりの3月に鼻と目に異変を感じました。そう、私は耳鼻科医1年目にしてスギ花粉症になってしまったのです。
花粉症患者の割合~日本人は鼻がつまりやすい~
現在、日本全体では約4割、東京では半分近くの人がスギ花粉症患者さんです(表1)。スギ以外の植物やダニやハウスダストにまで対象を広げると、約6割の日本人がアレルギー性鼻炎を持っていることになります。花粉の時期、私は鼻がつまりやすくなります。特に就寝時に、急に両鼻がつまって死ぬかもしれないとパニックになることがあります。また、昔から風邪をひいたときに、やたらドロドロした黄色い鼻水と目の奥や頬の痛みにたびたび苦しんできたことを思い出しました。たまたま別件で撮影したCTでその原因が鼻中隔弯曲(びちゅうかくわんきょく)と鼻茸であることが分かりました。
表1:東京都の地域別スギ花粉症推定有病率
※「花粉症一口メモ 平成30年版(東京都健康安全研究センター)」10ページのグラフを引用
鼻の構造
鼻は鼻中隔で左右に分けられ、それぞれの中に上・中・下鼻甲介という大きなヒダがあります(図1)。さらに外側に副鼻腔(上顎洞や前頭洞など)というほら穴があり、鼻から吸った空気がそこに出入りすることできれいな環境を保ちます。
図1:鼻の構造
鼻閉(鼻づまり)の原因とその悪影響
鼻中隔が曲がっていたり、下鼻甲介が腫れていたり、アレルギー性鼻炎で鼻粘膜が腫れたり鼻茸(ポリープ)ができたりすると鼻がつまります。最初に書いたとおり、残念ながら私はこれらすべてを持っています。そして、それらによって奥にある副鼻腔が密閉空間となると、中の環境が悪化して細菌やカビが繁殖しやすくなります。これが副鼻腔炎、いわゆる「ちくのう症」というものです(図2)。慢性副鼻腔炎の主な症状は、鼻づまりや頭重感・頭痛、だるさを感じ集中力がなくなる、黄色く粘り気のある鼻水が鼻や鼻の奥から出る、臭覚異常などです。
鼻づまりによって副鼻腔炎になりやすい以外にも、いびきをかく、歯並びが悪くなる、しまりの悪い顔になるなど、悪影響は様々です。
図2:鼻中隔弯曲(←)に起因する副鼻腔炎(*)
鼻閉(鼻づまり)の治療
鼻閉治療はまず薬によってアレルギーを抑えたり、鼻粘膜を収縮させたりして空気の通り道の確保を狙います。しかしながら薬の効果が限定的である場合や、長期服薬が嫌という場合には根本治療として、鼻内をリフォームする手術を考えることになります。そのスタンダードが、曲がった鼻中隔をまっすぐにしたり、肥厚した下鼻甲介をスマートに直したりする「鼻中隔矯正術」と「粘膜下下鼻甲介骨切除術」です。狭い部分を物理的に広げることができ、鼻の通りが驚くほど良くなります。皆さまに大変喜ばれる手術です(図3)。
図3:鼻閉(左図)と手術によって改善した状態(右図)
副鼻腔炎の手術治療
副鼻腔炎に対しては、膿の溜った副鼻腔の出入り口を拡げて空気の通りを確保し、かつ内部の膿やカビを洗い出します。上記鼻閉手術に引き続いて行うことが多く、鼻の「リフォームと大掃除」と説明すると分かりやすいと思います。
花粉症の手術治療
アレルギー反応を起こしている数本の後鼻神経を部分的に切断することで鼻汁や鼻閉(鼻づまり)を改善させることができます(図4)。内服治療では効果が薄い場合に適応になる、この「後鼻神経切断術」は、現時点で可能な唯一の永続的な根本治療です。花粉症のみならず、ダニやハウスダスト、イネやブタクサなどあらゆる吸入抗原に対して有効なので、複数のアレルギーでお困りの方には特に効果を実感していただけます。
図4:アレルギー改善手術で切る「後鼻神経」
これらの手術は全身麻酔で1~1.5時間程度で行います。内視鏡を使って鼻の穴から行う手術なので顔に傷がつくこともありません。当院で行うことが可能ですので、お困りの方はぜひ一度ご相談ください。
執筆 耳鼻咽喉科 部長 大塚 邦憲 |