睡眠時無呼吸症候群（SAS）とは？
患者さんのためのQ&A
私が東京医科大学の主任教授をしていた頃、（「夜の男」と言われていましたが、）睡眠時無呼吸症候群の研究をしていました。夜起きていて患者さんの無呼吸の状態をきめ細かく観察していたので、「夜の男」と言われたのだと思います。これまで延べ数千人の患者さんを診察していますが、この分野には未解明な病態があり臨床研究がまだまだ必要です。今回は睡眠無呼吸症候群（SAS）を取り上げたいと思います。
睡眠時無呼吸症候群とは？
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に何度も呼吸が止まってしまう病気です。睡眠時無呼吸症候群を英語でSleep Apnea Syndromeと表記し、頭文字をとってSASとも呼ばれます。寝ている間に起こる病気なので気づいていない人も多くいると推計され、日本の潜在患者数は9００万人以上存在すると報告されています。
なぜ睡眠時無呼吸症候群が怖いのか？
睡眠時無呼吸症候群（以下、SAS）の代表的な症状として挙げられるのが「いびき」です。いびきとともに呼吸が止まり、身体が低酸素状態となり、私たちの身体は酸素を補うために心拍数を上げます。この状態が継続的に繰り返されることによって血管に負担がかかってしまい、狭心症や心筋梗塞、脳卒中の発症リスクが上がると言われています。十分な睡眠が取れていないため、日中の居眠りによって大きな事故につながるケースも過去にありました。クルマの運転中に起こった事故や鉄道のオーバーランなどです。大きなニュースとして取り上げられたのをご覧になった方もいらっしゃると思います。米国では夫のいびきがうるさくて、妻が耐えられず、離婚したというケースもあるそうです。いびきが離婚の原因になってしまったというのも非常に怖いですね。
主な症状とは？
SASはいびきだけではありません。代表的な症状としては、「日中に眠気を感じる」、「朝起きた時に頭痛がする」、「いつも熟睡感が無い」などです。このような症状がある方は医療機関に相談するようにしましょう。
- 日中に居眠りをしてしまう
- 寝汗をかく
- 何度も目が覚めてしまう
- 寝ているとき呼吸が乱れる
- いつも疲れている
- 起きるとき身体が重い
- 集中することができない
- 起きるとき口や喉が渇いている
SASの原因？
SASの主な原因として、大きく２つに分類されます。１つは上気道（空気が通る道）が狭くなっていて呼吸が止まってしまうタイプで、SAS患者さんのほとんどがこのタイプに該当するといわれています。肥満や飲酒、舌の根本が落ち込む舌根沈下、小さな顎などが挙げられます。
もう一つは、脳から呼吸するように司令が出ていないことによって起こる呼吸中枢の異常です。患者さんは数％程度といわれています。
肥満の方は特に要注意
太っている人は上気道にも脂肪がついており、イビキをかきやすくなります、肥満の人にSASが多いのはそのためです、逆にSASが肥満の原因になっているともいわれています。睡眠中に出る成長ホルモンが鍵になっています。成長ホルモンは子供の発育に欠かせませんが、実は大人になっても重要で、睡眠中に成長ホルモンが分泌されないと体脂肪が分解されず、体重が増えてしまうのです。つまりSASを治療するとダイエットにもなるのです。
SASの検査と治療
SASの検査は、在宅で行うことができる検査（PSG：ポリソムノグラフ）を当院では採用しています。この検査で睡眠と呼吸の質を調べます。心電図や鼻・口の気流測定、腹部の動きなどを見るセンサーを一晩身体につけてもらいます。入院検査を行っている施設もありますが、在宅での検査（PSG）で脳波も分かるので、検査結果はほとんど同じとされています。
治療では、まずは食事量やお酒の量を少なくするよう指導して生活習慣の改善を行います。睡眠時にCPAPという機械を使用する治療法が最も一般的です。鼻にマスクを装着して、そこから空気を送り出して喉が塞がらないようにする治療法で経鼻的持続陽圧呼吸療法と呼ばれています。その他、マウスピースによって気道を広く確保する治療法などがあります。気道を塞いてしまう部位が明らかな場合は手術を行う場合もあります。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群（SAS）は、命に関わる病気を引き起こす可能性のある病気で、居眠りによって他人を巻き込む事故を起こすこともある怖い病気です。いびきをかく、あまり眠れていないと感じる方は医療機関を受診して検査を行うようにしましょう。
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監修 総合東京病院 呼吸器内科 松岡 健 |