放射線治療の種類とは
放射線治療には大きく分類して、体外から照射する外照射と、ラジオアイソトープを用いて体内から治療する小線源治療があります。ここでは一般に広く使われている外照射について主にお話しします。
外照射で使用する放射線としてはX線があります。非常にエネルギーの高い光ともいえ、目には見えないが身体の深くまで届く光線です。重粒子線は重たい粒子(といっても炭素の原子核ですが)を高速でぶつけます。陽子線治療では水素の原子核(プロトン)を使い、X線と重粒子の間くらいの性格です。
放射線の種類とがんに対する効果
では、これらの放射線はがんに対してはどのように効果が違うのでしょうか。多少難しくなりますが、放射線の効果については生物学的効果(細胞そのものに対する効果)と線量分布(どのように腫瘍などに照射するか)に分けて考えるのが良いでしょう。
放射線の生物学的効果
まず、生物学的効果については、重粒子は重たいので破壊力が非常に強く、肉腫系の腫瘍などX線の効果が少ない腫瘍でも効果があります。しかし、いわば大砲のようなもので当たったところは正常組織も含めて全て壊してしまいます。
一方、X線では何十回かで分割で照射する場合は多少広く照射しても、正常組織は温存し、がん細胞のみを消滅させることができます。X線でも分割を少なくして高線量を数回で照射すると、これまでの分割照射で効果が少なかった腫瘍にも高い効果があります。陽子線の生物学的効果はX線に近いと言われています。
放射線の線量分布
また、線量分布に関しては、重粒子と陽子線はよく似ていて、体内に入ってから一定の深さで止まる性質(ブラッグピーク)があります。それに対してX線は減衰しながらも体を突き抜けます。
確かにブラッグピークは素晴らしい武器となりうるものですが、現実には難しい点もあり、例えば呼吸移動や経路にある臓器の動きで微妙に止まる位置が変わってしまいます。それを防ぐためにある程度、当てる範囲に余裕を取らざるを得ません。
X線は突き抜けますが、そのため微妙に制御するのは主に方向だけですみ、回転させながら多方向から微妙に細かく制御できるので正確さという点ではむしろ優れている場合が多いと思われます。
どの腫瘍にどの放射線を使えば良い?
では具体的には、どのような腫瘍にどのような放射線を使えば良いのでしょうか。まず先に挙げたように、骨肉腫とか脊索種というようなX線に効果の少ない腫瘍では重粒子で効果がありそうです。また、小児脳腫瘍や脊髄への照射では、一定のところでとまり、X線に生物学的効果の似ている陽子線が良いと思われます。
一方、乳がんの術後照射などは正常組織の中にがん細胞が散らばっている(可能性がある)部位を治療するので、重粒子では全てを破壊してしまい向きません。腸管など感受性の高い臓器が非常に近い場合も正常細胞温存効果のあるX線が良いでしょう。
全ての場合について書くことはできませんが、大事なことはイメージで治療を選ぶことではなく、科学的な証拠(エビデンス)がある治療を選ぶことだと思います。
例えば前立腺がんに関しては、従来のX線に加えて粒子線も保険適用になりましたが、より有効ということは証明されていませんし、ガイドラインなどで特に推奨もされていません。むしろ、保険での費用を安く抑えておりX線と効果も費用も同等、とのことから保険適用になった、というのが実情のように思われます。
がん治療で迷ったらセカンドオピニオンを
他の手術やその他の治療法の選択でも同様ですが、ネット情報やイメージで選ぶことには限界があるので、もし迷ったらセカンドオピニオンを受けてください。
がん治療というのは人生の一大事でありますし、やり直しが効きません。事前になるべく客観的な専門家の意見を、できれば複数から聞くことが重要と思います。
監修 総合東京病院 放射線治療センター |
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