公開日:2022年5月25日 |最終更新日: |カテゴリ:前立腺, 放射線治療コラム

前立腺がんで選択される治療方法とは

転移のない限局性前立腺癌は、PSA検査(前立腺の上皮細胞から分泌されるたんぱく質を調べる検査で、前立腺がんの早期発見に役立つ)などでよく見つかるようになってきました。ではその後、どのような治療をすれば良いでしょうか?

限局性前立腺がんは、低リスク、中リスク、高リスクと再発などの可能性に応じて分類されます。年齢にもよりますが、低リスクの場合には何もしないで様子を見ることもあります。低リスクで治療を選択した場合や中リスクの場合は、手術療法や放射線療法が適応になります。

高リスクの場合でも手術は可能ですが、前立腺の外に浸潤する可能性もあるため、再発を防ごうすると外側にある神経を傷つけ副作用が出現する率が高くなることがあります。さらに、手術をしてもPSAが上昇し、結局は術後の放射線が必要になることも多くなります。その際はより副作用が出現しやすくなるため、高リスク前立腺がんには最初から放射線治療を行うのが一般的には好ましいといえます。ただ、手術や、小線源+外照射などを積極的に行うと生存率は変わらなくても局所再発は減る可能性はありますので、それを推進する動きもあります。

前立腺がんの治療方法や副作用

前立腺がんの手術には開腹、内視鏡、ロボットなどの方法がありますが、治療成績に関しては大きく変わらず、手術時間短縮はロボットなどが優れる、とされます。

放射線治療にもIMRT、定位放射線治療などの外照射、ラジオアイソトープを挿入する組織内照射、あるいは粒子線治療など色々ありますが、しっかりと治療すればどれをやっても大きく変わりません。

その他、超音波を使うHIFU(ハイフ)や凍結療法など特殊な治療もありますが、確立した医学的根拠が少なく再発も多い印象で、あえて選ぶ必要はないように思えます。

では、副作用の点ではどうでしょうか。手術の場合は神経を傷つけることによる尿もれや勃起障害、放射線の場合には直腸出血が時にあることなどが問題になります。どちらも様々な技術的進歩があり少なくはなっていますが、よく治る治療である以上、副作用を減らすことが患者さんの関心ごとと思います。

高齢者非小細胞肺がんの治療割合(米国)

表1.前立腺がん治療方法と副作用

前立腺がん治療後の患者さんの「後悔」とは

今回紹介するのは2021年にJAMA oncologyという世界的一流の医学雑誌に発表された、治療後に患者さんが実際どのように「後悔」しているかという調査研究です。

米国で行われたこの研究では、限局性前立腺がんが低リスクの患者さんでは手術や放射線治療を行った場合に「経過観察」を選択するより後悔している傾向がみられました。放射線治療は一般に手術より後悔が少ない傾向ですが、特に高リスクの場合には明確に手術より放射線の方で後悔が少ないとの結果でした。ただ、これはあくまでも副作用などから患者さんから見た主観的な要素が主で、低リスクでも経過観察をするより治療した方が良い場合もありそうです。

高齢者非小細胞肺がんの治療割合(米国)

表2.前立腺がん治療後の「後悔」

がん治療の「後悔」を少なくするには

がん治療後の後悔を少なくするにはどうしたら良いでしょうか。私は、患者さんも治療についてある程度勉強する必要があるかと思います。ネットの情報もありますが多少は偏っていることもあるので、納得いくまで主治医に聞くこと、さらに、大変重要なことですので多少手間をかけても別の科、施設でのセカンドオピニオンも大事かつ必要だと思います。

放射線治療に関してはぜひ、放射線治療医に聞いてください。

参考文献

監修

総合東京病院 放射線治療センター
国枝 悦夫

国枝悦夫医師

放射線治療センター 放射線治療セカンドオピニオン外来