高齢者の非小細胞肺がんの治療選択傾向
米国の高齢者の肺がん治療では定位放射線治療が広く行われています。図1に示すように高齢者ほど、放射線療法(水色)が手術(灰色)に取って代わっています。
また近年では図2のように、放射線療法の治療選択が増加しています。手術も侵襲を少なくする方向性ですが、やはり侵襲が少ないことが放射線治療の利点で高齢者には向いています。
現在のところ、早期非小細胞肺がんの標準治療は肺と縦隔のリンパ節を切り取る葉切除ですが、身体への負担が大きく、より狭い範囲を切り取る方法もあります。さらに体幹部定位放射線治療(SBRT)は身体への負担が非常に少ないため高齢者にも容易に適用することができます。生存率などの治療成績はほぼ手術と同等といわれており、日本でももっと普及してもよい治療だと思っています。ただ、肺の状態によっては副作用が出現することがあるのでその点の見極めが重要です。
米国では疾患データベースが非常にしっかりしていて、かつ世界の研究者に公開されています。残念ながら日本での同等のデータはありませんが、このような方への放射線治療の利用は米国の数割以下ではないでしょうか。
また、治療法の選択に関しては、医師と患者が情報を共有して治療方針を決めて行くShared decision-making というやり方が普及していることも放射線治療が選択される一助になっているように思います。
図1.高齢者肺がんの治療方法(米国)
図2.高齢者非小細胞肺がんの治療割合(米国)(文献1より作図)
本院での治療例
85歳女性 早期肺がん
定位放射線治療 50Gyを5回に分けて照射し腫瘍消失
参考文献
- Lancet 2019
Practice Patterns and Outcomes in Elderly Stage I Non-Small-cell Lung Cancer: A 2004 to 2012 SEER Analysis. - 「治療法選択手引き書-早期肺癌と告知されたら手に取ってみて下さい-ピンポイントの放射線治療、手術の効果を知っています?」Kindle版 武田篤也 (著)
また、私の友人の放射線腫瘍医が定位放射線治療の電子書籍を出版しています。参考にしてもよいと思います。
監修 総合東京病院 放射線治療センター |
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