放射線医薬品とは?
~放射性医薬品~
患者さんのためのQ&A
皆さんは『放射能』と聞くとどのようなイメージを持ちますか?
「怖い」、「身体によくない」、「何だかよくわからない」といったようなものが大半ではないでしょうか。 私も皆さんと同じようなイメージを持っています。『核』や『放射能』といった単語のイメージはあまり良くないですよね。原子爆弾によって生まれた怪獣が東京に上陸して暴れるという映画があります。日本人が核に対する心象を描いた傑作ですが、それだけ日本人にとって核や放射能は恐ろしい・・・この話をするとコラムの雰囲気がすごく重くなってしまうので止めます。
さて、そんなキラワレモノの放射能ですが医療では無くてはならない存在として知られています。
有名なところではレントゲンをはじめとした検査に利用されています。そして医薬品の中にも放射能を有するものがあることはご存じでしょうか?「え~放射能が医薬品に!?」と驚く方もいるかもしれません。 そうです、今回は放射性医薬品、その中でも『PET薬剤』といわれる薬についてご紹介をしたいと思います。
PET薬剤とは
『PET薬剤』は「ぺっとやくざい」と読みます。何だかかわいくないですか?
私は普段から院内でつくられたPET薬剤を医薬品として使用できるかどうかの検定を行っています。検査をする患者さんと直接話をしたりはしないのですが、裏方として働かせてもらっています。
医薬品というと一般的に病気を治す目的で使用されますが、中には病気を診断するために用いる医薬品も存在します。
PET薬剤はPET検査という放射性物質を用いた検査で使用する薬剤を指します。PET検査は色々な事ができるのですが、本コラムでは『がん細胞の有無や身体の中の広がりを調べる検査』としてご紹介します。
PET薬剤でどのようにがんが分かるか
それではPET薬剤でどのようにがんが分かるのかを簡単に説明します。
がん細胞は正常な細胞に比べ細胞分裂を激しく繰り返すため、栄養であるブドウ糖がより多く必要となります。そのためブドウ糖を投与するとがん細胞に多く集積します。
そこでPET薬剤の登場です。この検査はFDG(えふでーじー)という薬を使います。FDGはブドウ糖に放射能を持たせた薬剤です。FDGを注射すると、がん細胞はブドウ糖と間違えてこれを取り込みます。普通のブドウ糖であれば代謝されすぐに無くなってしまうのですが、FDGは代謝がブドウ糖より遅く、しばらくの間、がん細胞の中に集積し微量の放射線を出し続けます。そして、PET/CTという装置で全身の放射能を測定することで、がん細胞がどこにあるのか測定をします。
がんの検査にも色々ありますが、PET検査は他の検査では見逃してしまうような小さながん細胞でも見つけ出す事ができる非常に有用な検査なのです。
PET薬剤の安全性
そんな事いっても放射線を出す薬を身体の中に入れても大丈夫なの?と疑問に思う方も多いと思います。
PET検査での放射線被ばく量は、胃のバリウム検査よりも低いのです。また、FDGは徐々におしっこから排泄され、検査翌日にはほとんど体内から消失するため健康への影響はないと考えられています。
一度検査を受けてみてはいかかでしょうか?PET薬剤は自分の身体の事を知らせてくれるとてもいい薬ですよ。
監修 総合東京病院 |
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