くすりを飲むタイミング
~意外と知らない⁉くすりの話 第1回~
患者さんのためのQ&A
“くすり”とは?
“くすり”とはみなさんにとってどういうものですか?
「病気を治すために必要なもの」、「錠剤やカプセル」、「苦くて飲みたくない」・・・など、考え方は十人十色。その人が置かれている状況によって考え方は変わってくると思います。
私たち薬剤師の世界では、“くすり”とは「人体に有益な作用をもたらす物質」と定義します。(「火薬」や「農薬」などにも“くすり(薬)”の文字が使われていますが、これらは前述の“くすり”には該当しません。)
“くすり”の歴史は長く、さまざまなウンチクが存在します。薬剤師によるこの連載コラムでは、“くすり”にまつわる・意外と知らない、役立つ話を紹介します。第1回目はくすりを飲むタイミングについてお話ししたいと思います。
くすりを飲むタイミングはさまざま
“くすり”を薬局で処方してもらう時、くすりの入った袋は「薬袋(やくたい)」と呼ばれ、薬袋には用法・用量が記載されています。昔のくすりは毎食後に飲むものが多かったのですが、最近では医薬品開発の進歩により1日1回で済むくすりが増えてきました。さらに、1週間に1回、1ヶ月に1回で済んでしまうくすりもあります。
薬袋には「食後」、「食前」、「食間」、「起床時」「就寝前」など、薬を服用するタイミング(用法)がさまざまに記載されています。この中で最も多いのは「食後」で、さらに細かく「食後30分」、「食直後」という表記もあります。
また、「食前」についても「食前30分」、「食前15分」、「食直前」のように、「食後」よりもさらに細かく指示されていることもあります。こんなに細かいと『「食後30分」だけど、10分過ぎてしまったらどうすればいいのだろう』とくすりを飲むのに困ってしまうこともあるかもしれません。
さらに「食間」という表記もあります。「食事中に服用する」という意味で捉える方もいるかもしれませんが、そうではありません。「食間」は“食後2時間”を指しており、消化が進んで小腸が空っぽの状態で服用するくすりに対して用いる表記です。
食事と服用(くすりを飲む)の関係
くすりを飲むタイミングはなぜ食事と関連しているのでしょうか。その理由は2つあります。1つは、食事という生活習慣と関連づけることで飲み忘れを防止するためです。もう1つは、くすりの吸収に影響するからです。
一般的に、食後に服用するのはくすりの吸収を良くするためだと考えがちですが、それだけに留まらず、体内に吸収される際のさまざまな影響が考慮されています。
例えば、食後に飲むことにより吸収が悪くなってしまうくすりでも、あえて「食後」と指示されていることがあります。これは、くすりの吸収が多少悪くなっても、毎回の吸収が一定となり安定した効果が得られることを重視しているためです。一方、いくつかの糖尿病のくすりでは、食事による血糖上昇のタイミングとくすりの効果発現が一致するよう細かく食前の服用時間が指示されます。
食前、食後、さらに細かい服用時間の指示には、きちんとした意味があるのです。
くすりの吸収について
くすりの吸収は食前と食後でどちらがよいのでしょうか?
一般的には、くすりを吸収する器官である小腸が空っぽであると吸収がよくなることから「食前」のほうがよいとされています。ただ、通常「食前」と指示されることが多い漢方薬は吸収が悪いものも多く、漢方薬独特の風味が気になって食欲がなくなってしまうというケースもみられます。このような場合には、「食後」に飲むよう指示されることもあります。
くすりを飲むタイミングには意味がある
くすりを飲むタイミングには深い意味があることをわかっていただけましたか?
くすりを飲む際は、しっかりと指示を守るようにしましょう。飲み忘れてしまうこともあると思いますが、そのようなときは薬剤師に確認することをおすすめします。
監修 総合東京病院 |
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