風疹ワクチンの重要性
患者さんのためのQ&A
風疹のワクチンはどんな人に必要なの?
妊娠中の女性が風疹に感染すると、おなかの赤ちゃんが先天性風疹症候群を発症するおそれがあります。妊娠中の女性は感染しないように努める必要がありますが、妊娠中にワクチンを打つことはできません。妊婦健診では風疹の抗体価を測定しますが、その際十分な抗体がなかったとしてもワクチンの接種はできないため、風疹にかからないよう注意するほかないのです。
それでも、妊娠に気がつかないうちに風疹に感染していたり、妊娠中に身近に風疹を発症した人はいなかったのに実は風疹に罹患していた、というケースは少なくありません。妊娠中の女性およびその家族全員が、インフルエンザより強い感染力でありながら症状が出ない方もいるこの感染症から100%感染しないようにするのはかなり難しい、ということを、新型コロナウイルス感染症を通じて皆さんはもうご存じではないでしょうか。最善の策は、妊娠を考える前に、妊娠を希望する女性やその家族(夫、子供、祖父母など)すべての方が風疹に対する免疫を持っている必要があるということです。
風疹ワクチンはもう接種したから大丈夫?
風疹ワクチンの基本は生涯で2回接種です。1回の予防接種では抗体が十分作られない可能性があり、さらに年月の経過に伴って抗体が減少していくこともあります。1回しか接種していない方は2回目の接種を受けましょう。
今の子供たちはMRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)を2回接種しています。しかし、1990年(平成2年)4月1日以前に生まれた人は1回接種の機会しかありませんでした。自主的に接種したことがなければ1回のみの接種となっていますので、今すぐ2回目接種をしましょう。
風疹ワクチンはもう接種したから大丈夫?
風疹ワクチン定期接種の状況は以下の通りです。母子手帳が手元にない、接種歴がわからない…という方はぜひ確認してみましょう。
生年月日 | 男性 | 女性 | 風疹ワクチン接種状況 |
---|---|---|---|
戦前~昭和37年(1962年) |
◯ | ◯ | 1回も接種していません。多くの方が自然感染し、免疫があると考えられていますが、風疹の診断が確かではありません。妊娠を希望する女性または希望する女性が身近にいる場合は抗体検査を受けましょう。 |
昭和37年(1962年)4月2日~ |
◯ | - | 1回も接種していません。第5期風疹定期接種のクーポンが各自治体から届いています。まずは医療機関を受診しましょう。 |
- | ◯ | 中学生の時に学校にて集団接種を受けています。(1回) |
|
昭和54年(1979年)4月2日~ |
◯ | ◯ | 中学生の時に個別接種を受けています。(1回) |
昭和62年(1987年)10月2日~ |
◯ | ◯ | 1歳~7歳半の間に定期個別接種を受けています。(1回) |
平成2年(1990年)4月2日~ |
◯ | ◯ | 1歳~7歳半の間に定期個別接種を1回受けていますが、それに加え平成20年度(2008年)~平成24年度(2012年)の5年間に限り特例処置の対象となった方です。 |
平成12年(2000年)4月2日~ |
◯ | ◯ | 定期接種として2回接種しています。 |
平成18年(2006年)4月に1歳を迎えた、およびそれ以降に出生したすべての児 |
◯ | ◯ | MRワクチンの定期個別接種を2回受けています。 |
※前述のように、現在のMRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)の導入は2006年(平成18年)です。それ以前は原則、麻疹単体ワクチン、風疹単体ワクチンを接種していました。よって、各ワクチンをそれぞれ2回接種しているか確認してください。
※1989年(平成元年)4月から1993年(平成5年)4月に限っては麻疹ワクチンの代わりにMMR(麻疹・風疹・おたふくかぜ混合ワクチン)を選択することもできました。その後MMRワクチンは中止となっていますが、その期間に接種している人はMMRワクチンを接種している可能性があります。これも1回分として考えてかまいません。
風疹ワクチンには空白世代が存在します
結論として、風疹ワクチンの定期接種の変遷に伴い、十分な免疫がない空白世代があります。
それが、1962年(昭和37年)4月2日生まれから1990年(平成2年)4月1日生まれまでのすべての方です。この年齢層がいま現在、仕事・妊娠・子育てに最も奮闘している世代かと思います。風疹の免疫がない集団の中で生活している危機感を持ち、他人事と考えず、ぜひ風疹という感染症と向き合ってください。
監修 総合東京病院 |
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