ワクチンの副作用と費用
患者さんのためのQ&A
ワクチンの副作用は大丈夫?
ワクチンは体にとっては異物です。この異物を排除しようとするために免疫反応が起こり、それによって感染症の発症を防ぐ免疫(抗体)が作られます。これを主反応と呼ぶのに対し、免疫ができる以外の反応が発生することを副反応といいます。副反応には軽い症状(発熱、接種部位のはれ)、アレルギー反応から重篤なもの(脳症、脳炎)まで様々ですが、生ワクチンか不活化ワクチンかによっても異なります。
生ワクチンは前述の通り、ウイルスや細菌の病原性をきわめて弱くしたものをワクチンとして接種するので、それぞれのワクチンの感染症の症状が弱く出現することがあります。一方で不活化ワクチンはそのようなことはありません。症状のほとんどが様子を見ていれば回復するもので、ワクチン接種後に起こった症状が重篤であるとして医療機関から届けられたものは多くても10万接種あたり1人程度です。
BCGが10万接種当たり3人、ロタウイルスが4人、HPVワクチンが7~9人程度との報告がありますが、ここで注意したいのがワクチン接種との因果関係です。この報告はワクチンとの因果関係ははっきりしていません。例えば、ワクチンそのものではなく針を刺すという行為に迷走神経反射が起きて失神してしまう場合や、たまたま別の感染症で熱が出た場合などがあります。
このような因果関係がはっきりしないワクチン接種後に起こった症状すべてを有害事象といいます。つまり有害事象は、ワクチンと因果関係が明らかなもの(=副反応)、不明なもの、他の原因によるものすべてを含んでいます。しかし、日本では有害事象=副反応と混同されていることが多く、必要以上に不安な思いをされている方も多いのではないかと思います。
ワクチンによる副反応のなかには重篤なものもあり、確かに可能性はゼロではありません。しかし、その副反応は本当にワクチンによるものなのか、ワクチンのメリットより危険なものなのか、安易に情報に惑わされることのないよう不安な時は医師に確認することが大切です。
予防接種の費用は高くないの?
小児期の定期接種は適切な時期に接種すれば公費で接種できます。適切な時期に接種を逃してしまうと費用がかかってしまいますので、生後2か月になったら医療機関を受診し、ワクチンスケジュールを立てましょう。
この他、高齢者の季節性インフルエンザや肺炎球菌感染症のワクチンなど、公費で接種できるものは一部公費負担(医療費助成制度)の対象となる場合があります。また現在、風疹の第5期定期接種として1962~1979年度(昭和37~53年度)生まれの男性にはクーポンが配布されており、抗体検査と予防接種が公費で受けられます。この対象外の方でも多くの自治体で風疹抗体検査および予防接種が助成の対象となっています。
季節性インフルエンザのワクチンも各自治体で助成の対象となっていることが多いので、ワクチンはお金がかかると悩む前に詳しくは各自治体にお問い合わせください。
来年に延期された東京オリンピック・パラリンピックですが、このまま予定通り開催されるとすれば世界中の人が日本を訪れます。それは同時に、今まで流行していなかった感染症が日本で広がるきっかけになるといっても過言ではありません。しかし私たちが皆十分な免疫を持っていれば、感染は最小限に防ぐことができるでしょう。感染症はいまや私たちにとって、他人事でなく、大変身近な問題です。どうか私たち一人一人が、感染症を防ぐためにするべきことを考え、向き合ってくれることを願っています。
監修 総合東京病院 小児科 |
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