下肢静脈瘤外来

下肢静脈瘤治療に関するトピックスを解説しています

下肢静脈瘤コラム  

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診療時間

月曜午前、火曜午前・午後、水曜午前、土曜午前
担当医:伊藤 卓也(心臓血管外科

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受診に際しての注意事項とお願い

  • 受診を希望される患者さんは、まずはじめにお電話にてご予約ください。
  • 症状を正確に把握するため、検査をお受けいただきます。検査の数や種類によりお時間を頂戴する場合もありますので、予めご了承ください。

予約・相談ダイヤル 0570-00-3387
(月~土 9:00~17:00)

下肢静脈瘤とは?

読んで字の如く、「下肢(脚)」の「静脈」が「瘤(こぶ)」になっている病気です。しかし実際には見た目上「瘤」がはっきりしなくても下肢静脈瘤である場合もあり、病気の名前ほど単純なものではありません。

下肢静脈瘤の種類

図に示したように下肢静脈瘤にはさまざまなタイプがあります。もっとも症状が出やすく、見た目上も目立つ伏在静脈型(図1)、その他見た目上の問題となりますがあまり症状にはつながらないクモの巣状静脈瘤、網の目状静脈瘤などがあります。


伏在静脈型下肢静脈瘤


図1 伏在静脈型下肢静脈瘤

※コヴィディエン社より提供


下肢静脈瘤の原因

脚の静脈内には逆流防止弁があり、血液は常に心臓に向かって流れています。しかし何らかの影響で逆流防止弁が壊れると血液の逆流が起こり、静脈がボコボコと瘤化し、下肢静脈瘤になります。 下肢静脈瘤発症のメカニズムについてはこちらをご覧ください。


下肢静脈瘤になりやすい方

下肢静脈瘤は女性の方に多い疾患です。下肢静脈瘤のリスク因子として知られているものは、年齢(高齢になるほど下肢静脈瘤を持っている可能性が高くなる)、遺伝的要因(血縁関係者に下肢静脈瘤を持っている方が多い)、妊娠・分娩の既往(妊娠出産を契機に悪化することがある)、立ち仕事(理容・美容関係、販売員、飲食店の方などが多い印象です)などがよく知られています。


下肢静脈瘤の症状

以下が下肢静脈瘤で起こりやすい症状です。

  • 浮腫
  •  
  • こむら返り(夜間、就寝中、明け方に多い)
  •  
  • だるさ、重だるい感じ
  •  
  • 皮膚炎(うっ滞性皮膚炎:浮腫を伴う下腿が赤く腫れ上がり、疼痛を伴います)(図2)
  •  
  • 湿疹、かゆみ
  •  
  • 色素沈着(皮膚が褐色に色づきます。なかなか治りません)
  •  
  • 潰瘍(下肢静脈瘤を治療しないとなかなか治りません)(図3)
  

図2 うっ滞性皮膚炎

  

図3 うっ滞性潰瘍


下肢静脈瘤は上記のような症状を引き起こしますが、このような症状で日常生活に妨げが生じている場合に治療適応となります。逆に言えば、見た目上、下肢静脈瘤がボコボコしていても、上記のような症状でお困りでない限りは治療適応にはなりません。下肢静脈瘤は良性疾患です。基本的に放置したからといっても生命に危険が及ぶような事態に至ることはほぼありません。


下肢静脈瘤の検査

下肢静脈瘤の診断のためには超音波検査を行います。超音波検査にて、表在静脈の拡大の程度、血液逆流の有無などを確認して診断を行います。見た目で下肢静脈瘤が明らかでなくとも超音波検査にて下肢静脈瘤が見つかることもあります。初診の患者さんでは、担当医自ら超音波検査を行い、30分程度の時間をかけて診察を行います。


下肢静脈瘤の治療法

圧迫療法と手術療法があります。患者さんのご希望や症状の重症度などを考慮し、圧迫療法、手術療法のどちらを選択するか決定します。


圧迫療法とは?

圧迫療法は弾性包帯や弾性ストッキングにより下肢静脈瘤が存在する脚を外側から圧迫する治療です。これによって下肢静脈瘤の症状を軽快させることができます。下肢静脈瘤が弾性ストッキングにより潰れた状態になるので、血液が貯留するスペースがなくなり、症状が軽快します。浮腫だけでなく、こむら返りや皮膚炎、潰瘍などにも有効です。きつめの靴下を履くイメージですので、身体にとって侵襲の少ない治療と言えます。ただし、下肢静脈瘤自体が消失するわけではないので、弾性ストッキングの着用を止めると症状が再発してしまいます。


手術療法について

手術療法としては、伝統的には100年以上前からストリッピング手術が行われてきました。血液逆流が生じて下肢静脈瘤となっている静脈を離断し、体外に引き抜く手術です。疼痛、出血、麻酔法等々の問題で、最近ではより身体に負担の少ないカテーテル治療が行われることが多くなっています。

カテーテル治療(血管内焼灼術と血管内塞栓術)

心筋梗塞、脳梗塞などの疾患もカテーテルで治せる時代になりましたが、下肢静脈瘤もここ10年ほどでカテーテルによる治療の機会が増えてきています。カテーテル治療は大きく血管内焼灼術と血管内塞栓術に分けられます。
血管内焼灼術はレーザーやラジオ波によって拡張・逆流のある静脈を焼いてしまう治療です。焼灼することで静脈が閉塞し、逆流が止まるというメカニズムになります。
一方、血管内塞栓術は新しい治療法で、血管の中にシアノアクリレートという接着剤を詰めることで逆流を止める手術です。本邦では2019年12月に保険適応となった最新の下肢静脈瘤治療です。治療効果としてはストリッピング手術、血管内焼灼術、血管内塞栓術のいずれもほぼ同じ高い治療効果を誇りますが、静脈瘤の解剖学的形態や患者さんの合併症、内服薬の状況(抗凝固薬、抗血小板薬など)などに応じて術式を選択します。



その他、高位結紮術やフォーム硬化療法などもあり、患者さんの状態に合わせた手術を行います。特に以前カテーテル治療を行ったものの再発したようなケースでは硬化療法は非常に有効です。当院ではフォーム硬化療法を含め、上記すべての手術が可能です。



手術は基本的に日帰り手術で行います。血管内焼灼術であれば片脚20分程度、血管内塞栓術であれば30分程度で終了します。いずれも術後翌日または翌々日で一度外来にて超音波検査を行います。日帰り手術では心配という方については1泊2日の入院による手術も可能です。フォーム硬化療法は基本的に外来にて行います。


診療を検討中の方へご案内

患者さんの不安の中で一番多いのは、「血栓ができて心臓や頭に飛んでいかないか心配」というものです。
これは深部静脈血栓症、いわゆるエコノミークラス症候群を指し、この病気と混同している患者さんが多くいらっしゃいます。 基本的には良性疾患ですので、放って置いても命に関わることはなく、過度な不安を抱く必要はありません。 下肢静脈瘤を疑い、当科を受診され検査した結果が深部静脈血栓症であったということもあります。

当院は総合病院ですのでそのまま検査して治療を行うことができます。 患者さんにとってはむくみやこむら返りは十分辛い症状ですので、そのような症状がある場合には、過度な心配をすることなく気軽に下肢静脈瘤外来を受診していただければ幸いです。



下肢静脈瘤手術風景

図4 手術風景


下肢静脈瘤に関するQ&A

日々の外来診療を通して、患者さんからよくある質問をQ&A形式でまとめました。

どのような症状があらわれますか?
脚のむくみや就寝中・明け方にこむら返りが起こる、夕方にかけて脚のだるさを感じるといった症状を訴える患者さんが多いです。
動脈硬化・血栓と下肢静脈瘤との関係は?
「血栓ができて心臓や脳に飛んでいって詰まったら怖い」とおっしゃられる方がいます。
これは明らかに深部静脈血栓症と混同しているわけですが、実は医療従事者の中にも下肢静脈瘤と深部静脈血栓症を結びつけて考える方が結構いらっしゃいます。これは下肢静脈瘤にまつわる大きな誤解の1つです。

※詳しくは下肢静脈瘤の医療コラムをご覧ください。
なりやすい人ってどんな人?
当院の男女比率は男性3:女性7で、女性の方が多く外来にいらっしゃいます。
男性の方は色素沈着や皮膚潰瘍などで悪化した状態で来院することが多い印象です。
これには美に対する意識が男女で異なることも1つの要因と考えられます。女性はスカートをはいて肌を露出することを意識して常に脚を気にすることが多いですが、男性は多少血管がボコボコしていても気にすることが少ないのかもしれません。
そのままにしておくとどうなりますか?
下肢静脈瘤が進行すると皮膚のトラブルが生じます。
かゆみ、湿疹をはじめ、うっ滞性皮膚炎、それが進行すると色素沈着、皮膚潰瘍が生じ得ます。
どんな治療法がありますか?
大きく分けて圧迫療法と手術療法があります。

圧迫療法

弾性ストッキングの着用に抵抗がない場合や、着用に伴う合併症(かぶれ等)が起きない限りは弾性ストッキングを継続することで下肢症状の軽快が期待できます。しかし基本的には着用時にしか効果はなく根治的ではありません。根治を目指すのであれば手術をお勧めします。

手術療法

近年ではカテーテルを使った治療を実施するようになり、問題の静脈部分に接着剤を詰める血管内塞栓術(2019年12月保険適応)やレーザーやラジオ波で焼く血管内焼灼術を行っております。また下肢静脈瘤になっている静脈を引き抜くストリッピング手術のほか、高位結紮術やフォーム硬化療法なども実施しております。患者さんの状態を考慮して治療法をご提案させていただきます。

再発しやすい病気ですか?
下肢静脈瘤は遺伝的な要因や生活習慣の影響(立ち仕事など)を受けるので一定の割合で再発が起きることはあります。
下肢静脈瘤が原因のうっ滞性皮膚炎・潰瘍は皮膚科や形成外科で治療を受けても下肢静脈瘤を治療しないことには治らないかまたは容易に再発するのが特徴です。
手術は保険適用されますか?
有症状であればもちろん保険適用での治療になります。
症状のない下肢静脈瘤についてはそもそも治療の適応ではないため、治療をすすめることはありません。
下肢静脈瘤の治療で股関節や膝の痛みが軽くなったという話がありますが本当ですか?
もともと膝が悪い方、股関節が悪い方などでは下肢静脈瘤を治療することで脚が軽くなり、股関節や膝の疼痛も軽減したというケースも実際の臨床で経験しました。
日帰りでの手術が可能ですか?
手術は基本的に日帰り手術で行います。日帰り手術では心配という方については1泊2日の入院による手術も可能です。

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